Z世代の共感を誘うシンガー・ソングライター汐(うしお)れいらさんをご紹介します。2022年、インターネットテレビABEMAの恋愛リアリティー番組「彼とオオカミちゃんには騙(だま)されない」のBGMとなった楽曲「センチメンタル・キス」が、TikTokでバズっているのを見たのをきっかけに、私は聴き始めました。

最近では、アーティストのパフォーマンス一発撮りYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にも出演して、さらに注目を集めています。そもそもは、地べたに座布団を敷き、あぐらをかいてギターの弾き語り、というユニークなスタイルで路上ライブをしたところから始まっています。
彼女の独特な世界観も魅力です。インスタグラムでそれが垣間見えます。例えば、お手洗いに行くことを「お花を摘む」と言うことがありますよね。便座に座る汐さんの足元に花瓶を置いてローアングルから自撮りしているなど、シュールでアーティスティックな写真が並んでいます。元々小説家を目指していたこともあり、添えられた文章も、ひとひねりある表現です。
歌詞は、書き下ろした短編小説をもとに書いているそうで、メタファーを使った表現を解読する楽しさもあります。代表曲「センチメンタル・キス」では、恋人の熱が冷めてしまった女の子の心情を「ドラマ」と「たばこ」に例えています。「短くなってしまった吸い殻の 火消し役は 私だ」
この歌詞の解説を、ご本人が投稿サイト「note」に載せていたので抜粋します。【わたしが嫌だったタバコを吸うようになった、変わってしまった君の吸い殻を消してるのは私で、どんどん短くなって熱が冷めていく君に別れ話を切り出すのもわたしなんだ】
行動・心情とたばことのリンク、背景に恋人の変化、変化によって湧く悲しみ。短い一文に全てが詰め込まれていて、鳥肌が立ちました。昨年リリースされた初のEP「No one」には、元になった短編小説も添えられていました。聴いて自分で解釈する、小説を読んで聴く・・・。聴けば聴くほど味が出る煮干しソングたちです。
素晴らしいのは歌詞だけではありません。汐さんは息遣いの魔術師だと思います。一聴すると、真っすぐな声という印象を持つかもしれません。でも実は、声帯を閉じながら声を出す「エッジボイス」を瞬間的に効かせていたり、語尾の息遣いに毎回変化をつけていたり緻密です。「THE FIRST TAKE」での歌唱を拝見して、1曲の中に息遣いのバリエーションが100個くらいあるのでは!? と衝撃を受けました。汐さんの中に密度の高い世界観があるからこその表現なのでしょう。1本の映画を見たように心を揺さぶられます。ぜひ、魔法にかかってみてください。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 45からの転載】

山崎あみ(やまざき・あみ)/ 1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。タレント・モデル。1st写真集「Cantabile」(ワニブックス)の他、デジタル写真集も発売中。YouTube番組「うるおうリコメンド」(略称うるりこ。共同通信社制作)出演。









