火の国・熊本発ロックバンド「BLUE ENCOUNT」(略称ブルエン)は、とんでもないエネルギーを持つ、ひたすら熱いマグマのようなバンドです。メンバーはギター江口雄也さん、ボーカル&ギター田邊駿一さん、ドラム高村佳秀さん、ベース辻村勇太さん。楽曲を手がけているのは田邊さんです。
ライブに足を運ぶと、まるでブルエンの皆さんとぶつかり稽古をしている感覚で大忙し。ハイレベルな演奏と、真っすぐにガラスで突き刺してくるような歌声を受け止め、歌詞に感動し、「あなたに」と語りかける田邊さんのMCにも胸を打たれ、面白エピソードトークで笑わされる―。感情がぐちゃぐちゃです(笑)。
今やアニメやドラマ、映画の主題歌を幾つも担当していて、最新曲「gifted」も、Netflixで配信が始まったアニメ「ライジングインパクト」の主題歌ですが、2014年のメジャーデビューまでには10年間の下積み時代がありました。上京したものの、ライブの観客が増えない時期が続きました。地元に帰るわけにはいかず、就職活動をして内定をもらったこともあるそうです。ただ、その当時行っていたライブツアーが楽しすぎて、内定を辞退したといいます。
その後、大規模音楽フェス「サマーソニック」への初出演を果たした時、田邊さんは両親を招待しました。ステージを目の当たりにしたお父様はぼろぼろ泣いて、言ったそうです。「お前が息子でよかった」
田邊さんが書く歌詞には、もがいて突き進んできたからこそ生まれる言葉があります。私が大好きな曲の一つ「city」(2017年のアルバム「THE END」に収録)は、周りの人たちに認めてもらえなかった時代の悔しさと絶望をさらけ出した上で、「居場所なんてどこにもない/ならば俺らが居場所になればいい」「いや、居場所なんてちっちぇな/俺はあなたにとっての『街』になってみせる」と誓います。
私が担当するラジオ番組に田邊さんが出演してくださった時、シンガー・ソングライターの石崎ひゅーいさんから届いていた「森山直太朗さんのモノマネをやってほしい」というリクエストに、「全然いいですよ~」。いきなりアカペラで「夏の終わり」を歌ってくれて、放つパワーに私は体ごと揺さぶられました。トークではずっと笑わせてくれますし、「曲作りは大好きで、仕事だと思ったことはないです」と目がキラキラ。決して諦めず、常に周りに何かを与えようとする精神に満ちています。ヒット曲「ポラリス」の歌詞もすてきです。「〝強さ〟は何かの上に立つため在るんじゃない/大切なものを抱きしめるそのために」
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 27からの転載】
やまざき・あみ 1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSIClock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時)メインDJ。YouTube番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。共同通信社制作)金曜出演。初の写真集「Cantabile」発売中。