子だくさんの国として知られるフィリピンの2025年の出生率は1.7―。こんな結果がこのほど、フィリピンの国家統計局が実施した全国人口・健康調査で明らかになった。
調査を開始した1993年の出生率4.1の半分以下にまで減少した。人口を長期的に維持あるいは増加させるために必要な数値とされる2.1も下回っていることから、1億1272万人(2024年統計)の人口を抱えるフィリピンは今後、人口減少傾向に転じ、高齢化社会へと進む可能性が出てきた。
調査結果によると、都市部の出生率は1.5で、地方の2.0と開きがあった。階層別でも格差が広がっており、最も裕福な層は1.1と、日本の出生率(25年)1.13とほとんど変わらない。フィリピンの最貧困層は2.8だった。貧しい家庭ほど子どもの数が多くなっている。出生率の格差は学歴にも大きく関係していた。小学生までしか教育の機会を得られなかった女性は3.1と最も高く、大学まで通った女性は1.3だった。

調査対象となった15歳から49歳の女性のうち、既婚者で「これ以上子どもは必要ない」と答えた割合は57.3%に上り、5人のうち3人が出産を望んでいないことがわかった。また既婚女性のうち、避妊具を使用している割合も44.5%と前回調査(41.8%)から増えた。
フィリピン人口開発委員会のリサ・ベルサレス委員長は、この調査結果を受け、階層や教育によって根強い格差が続く現状を指摘した上で「その解消には、政府が国民に対してどれだけ効果的な投資ができるかにかかっている。人口および性と生殖に関する健康への対策や戦略は、社会経済開発と一体になって取り組まなければならない」との意向を表明した。
また、生産年齢人口の増加傾向も踏まえ、「子どもを中心としたサービスからジョブマッチングやスキルの向上へと徐々にシフトすべきだ」として、高齢化対策にも力を入れる考えを示した。
現地紙「フィリピン・スター」のコラムニスト、ブー・チャンコ氏によると、ここ最近、都市部の商業施設では多くの若いカップルが押しているベビーカーに、子どもの代わりにペットの犬が乗せられているという。同氏はコラムに書いている。
「彼らは節約しているわけではない。なぜならペットを育てるのは子育てと同じぐらいお金がかかるからだ。この傾向は、若者たちが、不透明な雇用環境や世界情勢を踏まえ、子育てに専念することへの不安感を反映している」
特にZ世代は晩婚化が進み、子どものいない夫婦共働きのライフスタイルを好んでいるという。同氏は高齢化による社会保障や医療への負担が増加する可能性にも懸念を示している。
さらなる経済成長により国民の生活が底上げされれば、フィリピンは今後、人口規模が同程度の日本(1億2065万人)の少子高齢化社会と同じような道を辿るのだろうか。

水谷竹秀(みずたに・たけひで)ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、「日本を捨てた男たち」で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.19からの転載】









