未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」の新連載「弁当の日の卒業生」。「弁当の日」、その日は買い出しから片付けまで全部一人で。2001年に香川県の小学校で始まった食育活動は、約25年を経て全国に広がっています。その提唱者である竹下和男氏が「弁当の日」の卒業生を訪ねます。
▼「将来の自炊率81%、子どもたちを変える食育とは」
学校法人服部学園理事長の服部幸應さんが昨年(2024年)10月4日に亡くなられました。服部さんとは5・6回、食育イベントでご一緒させていただきましたが、いつも「子どもが作る弁当の日」(以下、「弁当の日」)を応援してくださいました。それは、1999年の農林水産省の「食を考える国民会議」の設立発起人を務め、2005年の食育基本法制定に奔走されたのと同じ理由からでした。
服部さんは服部栄養専門学校の校長時代に生徒を相手に授業もなさいました。調理に関する知識や技術、食文化に関する教養や作法、栄養と健康づくりを教え、料理の世界で活躍する人材育成に尽力されていたわけです。服部さんは、教育課程を修了して卒業していく生徒たちの日常の「自炊率」にがくぜんとしました。4%だったのです。生徒たちは登校日に毎日料理を作っているのだから、かなりの生徒が練習も兼ねて休日の食事は自炊していると期待しておられたのです。
さて、中学校時代に「弁当の日」を経験した島根県と香川県の生徒が、広島大学で出会い、意気投合して卒論のテーマを「弁当の日」にしました。「弁当の日」卒業生の自炊率はなんと81%でした。
給料をもらえる仕事に就くための修行である料理専門学校の料理作りと、自炊や家族にふるまう練習としての中学校の「弁当の日」との差であったのです。そして服部さんは、一流の料理人だけでなく、全国民に「食」を大切にする心と体を育てたいと強く願って、「食育」に行きつきました。
3月22日早朝に再放送された「あの人に会いたい」(NHK総合テレビ)でも、「教育は大事ですよ。切ったり焼いたり、とにかく料理はなにかと面倒なのです。面倒と思わないように教育すればいいのです」と述べておられました。
そこで、次回から「弁当の日」の卒業生たちの今を紹介していきます。服部さんが応援してくれた「弁当の日」は、健康な食習慣を身につけるのに効果があることを感じてほしいからです。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。
そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。