
トランプ関税に振り回され、目先のことに追われることの多い昨今。長い目で子どもたちの未来を眺めた時、じっくり考えて行動に移し対応しなければならない危機は他のところにある。ユニセフ(国連児童基金)の「世界子供白書」(2024年11月発表)の日本語要約版が公開された。人口、環境、そして先端技術など、今後を占うさまざまな統計や分析を読むことができる。
白書では、2050年に子どもたちを取り巻く世界はどのようなものとなっているのかを予測し、子どもの権利を守るための行動が今取られなければ、未来は危機にひんする、と警鐘を鳴らしている。世界を変える三つの大きな要因(メガトレンド)として挙げているのは、人口動態の変化、気候危機・環境危機、先端技術の三つ。
2050年代の世界の子どもの人口は、現在とほぼ同水準の23億人程度と予測されているが、子どもの占める割合は世界のどの地域でも減る見込みで、アフリカでは40%を、東アジアや西欧では19%を下回る見通し。人口構成の変化は機会と課題をもたらし、子どもへの支援を含む社会サービスの拡大が見込まれる国々がある一方で、高齢者へのニーズとのバランスを図らなければならない国々もある。まさに日本が立ち向かわねばならない大きな課題だ。
気候・環境危機はすでに切迫した状況にあり、世界の子どものほぼ半数にあたるおよそ10億人が、気候災害や環境災害のリスクが高い国々で暮らしている。2000年代と比較して極端な熱波にさらされる子どもの数は最大8倍に、極端な河川洪水にさらされる子どもの数は3.1倍に、極端な山火事にさらされる子どもの数は1.7倍へと増加する見通しだ。
人工知能(AI)、ニューロテクノロジー、次世代再生可能エネルギー、画期的なワクチン開発などの先端技術は、子どもたちの将来を良いものにする可能性があると同時に、さまざまなリスクにさらされる可能性も包含している。国や地域によってはデジタル化がもたらす機会を利用できない子どももいるため、不平等が悪化する恐れも指摘されている。