子ども時代、カブトムシやクワガタなどのオスを戦わせて遊んだ経験のある人は少なくない。その戦い、年をとるほど長くなるのだそうだ。岡山大学(岡山市)とエクセター大学バイオサイエンス学部(英国)の共同研究で、甲虫の一種「オオツノコクヌストモドキ」のオスが羽化後の日齢によって対戦相手のオスと戦う戦術を変えており、戦い方も若いオスと加齢したオスでは、行動様式が変化することを明らかにした。
昆虫の齢は繁殖行動に影響を及ぼすことが分かっていて、メスとの交尾をめぐるオス同士の闘争はよく研究されてきたが、オスの齢と戦い方の関係について調べられた例はほとんどない。齢による闘争行動の変化を正確に評価するためには、日齢と体サイズをそろえ、遺伝的変異も除いたサンプルをたくさん準備して、詳細な行動観察を行わねばならず、困難が多かったからだという。
この研究では、闘争未経験の215対の年、サイズ、遺伝的背景の均一なオスを準備し、戦いの激しさや長さと日齢の関係を調べた。その結果、加齢の進んだオスほど戦う時間が長くなること、若いオスでは闘争の激しさと闘争時間の長さは正の相関にあるが、加齢したオスではこの関係性が消えることを発見した。日齢の経過によって、将来繁殖に投資できる資源量が変化するため、若いオスと加齢したオスでは、メスをめぐる戦いに対する執着度が異なるためだと考えられている。
この研究成果は2月24日、国際行動生態学雑誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」(Q1ジャーナル:Springer オンライン)に掲載された。