そして、本作に関しては、磯智明制作統括が、『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』(NHK出版)に掲載された「制作者からのメッセージ」でこう語っている。
「強国に囲まれた中で家康がたどった道のりが、先の見えない今の時代を生きる手掛かりになればと願っています」
つまり、「どうする?」と困難な決断を繰り返しながら戦国を生き抜く家康の物語は、今を生きる私たちの物語でもあるのだ。
それを裏付けるように、古沢は前述のインタビューで「この波乱の生涯を僕たち、私たちのストーリーとして見てもらうため、普通の人というキャラクターに設定しました」とも語っている。
悩み、苦しみながら戦国を生き抜く“か弱きプリンス”家康も、いずれは天下人にふさわしい成長を見せてくれるはず。その時点でこの第1回を振り返ってみれば、「あんなに弱々しかった家康が…」と感慨に浸るに違いない。
その成長が私たちの日々の活力になることを期待して、これから1年、物語の行方を見守っていきたいと思う。
(井上健一)