マスクは自己判断で、とようやくコロナ後に向けて動き出した日本。一歩先を行く欧州では、まったくいないわけではないものの、病院や高齢者施設などを除くと、街中でマスクをしているのは多めに数えて20人に一人、といったところだ。報道でもトップの話題はウクライナや自国の年金制度改革。日本でもだいぶ減ってきているが、コロナ禍が取り上げられることはまれになった。街中ではさまざまな言語が聞こえてくるから、欧州内の行き来はかなり戻っているようだ。アジアからの観光客はコロナ前と比較するとまだかなり少ないが、この夏はだいぶ増えそうだと期待する人は多い。3月上旬のフランス・パリとイタリア・トリノを歩いてみた。
パリのシャルル・ド・ゴール空港待合室から、パリ-トリノ便(エールフランス)の満席の機内に至るまで、やはりマスク姿は見つからない。主要な観光地やスーパー、市場、宿泊施設にも、形だけは手指消毒のボトルが置かれているところがあるものの、手を出す人はまれだ。この2年あまり、日本でほぼパブロフの犬のごとく消毒ボトルに手を差し出す癖がついてしまっている筆者は、ところどころでポンプを押してみるものの、実はボトルは空だった、というところも少なくない。要するにもうコロナは「終わっている」という認識が反映されているようだ。
トリノでは、スパ付きの宿泊施設に泊まってみたが、ここもマスクのマの字もなし。日本でも人気のイタリア食材を扱う「イータリー」本店(リンゴット)にも足を伸ばしたが、巨大な施設屋内には試食や試飲のスタンドも出て、やはり完全に“コロナ前”の自由が戻っている。市内中心部のレージョ劇場に、連日の公演が人気のオペラ「アイーダ」を見に行ったが、インターバルのビュッフェもカフェも元通りだ。
パリは、トリノに比べると若干多いものの、昨年に比べると更にマスク姿は減っており、地下鉄やバスの中でちらほら見る程度。3月上旬は年金改革法案への反対運動が盛り上がり、各地で抗議デモやストが続き、差し迫った問題は製油所のストによるガソリン不足や、収集車が来ないために街中に盛り上がるゴミの山。ストには慣れっこのパリジャンだが、パリ市内に住む会社員(27)は、「日に日に山になっていくゴミ袋で歩道がふさがれ、車道に出ないと歩けない場所がたくさんある」とため息だ。
3月中旬の1日の新規コロナ感染者数をざっくり見ると、日本が約1万人、フランス約3600人、イタリア約3800人。確かに日本は若干多いものの、マスク姿の多少には比例せず。日本では目下、コロナではなく花粉が理由でマスクを継続している人も多いと思われ、花粉の季節が終わる頃には、日本もこんな感じ?と想像しながら帰国便に。日本入国にはまだ、ワクチン接種証明やワクチンが3回に満たない人は陰性証明などが必要なため、日本便の搭乗口だけは列が長め。日本行きの機内だからか、「衛生上の理由からマスクの着用をおすすめします」とのアナウンスはあるものの、アナウンスをしているアテンダントをはじめ、乗客もマスク姿は少数派だった。
text by coco.g