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俳優の個性で見せる2本 ケイト・ブランシェットがオーケストラの指揮者を演じる『TAR/ター』/リーアム・ニーソンがアルツハイマー病に侵された殺し屋を演じる『MEMORY メモリー』【映画コラム】

『MEMORY メモリー』(5月12日公開)

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 完璧に仕事を遂行する殺し屋として名をはせたアレックス(リーアム・ニーソン)は、アルツハイマー病の発症によって引退を決意する。

 これが最後と決めた仕事を引き受けたアレックスだったが、ターゲットが少女であることを知り、契約を破棄。唯一の信念である「子どもだけは守る」を貫くため、独自の調査を進める中で、財閥や大富豪を顧客とする巨大な人身売買組織の存在を突き止める。

 余命わずかとなった殺し屋が、FBIに追われながら事件の黒幕と対決するタイムリミット・アクション。FBI捜査官役にガイ・ピアース、大富豪役にモニカ・ベルッチ。監督はマーティン・キャンベル。

 アルツハイマー病に侵された殺し屋というのはなかなか興味深い視点。忘れたときの用心のために腕にキーワードを書き込み、仕事が済むと消すというアレックスの姿が痛々しく哀れを誘う。

 ただ、事件の描き方がいささか回りくどく、人物整理も雑なのでミステリーとしては弱いのが難点。また、テキサスとメキシコとの微妙な関係は、西部劇の昔から描かれているが、ここでもメキシコの治安の悪さが強調され、見ていてあまりいい気持がしない。

 中年になってからなぜかアクション俳優となったニーソンだが、この映画のアレックス同様、最近は疲れが目立ち、悲哀を感じさせる。

 それがこの映画の狙いだったのかもしれないが、そろそろアクションからは引退した方がいいのではないかと思わされた。この後、出演100本記念作品と銘打たれた『探偵マーロウ』の公開が控えているが…。

(田中雄二)