NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。7月14日に放送された第二十七回「宿縁の命」では、藤原道長(柄本佑)の娘・彰子(見上愛)が一条天皇の下に入内、続いて一条天皇の妻である中宮・藤原定子(高畑充希)にも待望の皇子が誕生。さらに、主人公・まひろ(吉高由里子)も子どもを出産した。
彰子の入内、定子にとって待望の皇子誕生、そしてまひろの出産。史実に基づいているとはいえ、この三者を巧みに絡めた物語の展開は、相変わらず見事だった。それと同時に興味をかき立てられたのが、この三者が今後、どのように物語にかかわってくるのかということだ。
史実を振り返ってみると、子どもたちの今後については、さまざまな想像が湧いてくる。しかも本作では、まひろの子の父親は、夫の藤原宣孝(佐々木蔵之介)ではなく、道長という驚くべき説を採用した。子どもたちの運命が、複雑に絡み合って物語が進んでいくことは間違いないだろう。そのとき、まひろや道長たち親世代との間に、どんなドラマが生まれるのか。
それを占う試金石といえるのが、この回で描かれた一条天皇(塩野瑛久)と母・藤原詮子(吉田羊)の確執だ。皇子の誕生を祝うために内裏を訪れた詮子は、「朕は皇子が、私のようになることを望みませぬ」「朕は己を優れた帝だとも思ってはおりませぬ」と後ろ向きな発言を繰り返す一条天皇に対して、「私が手塩にかけてお育て申し上げたお上です。優れた帝でないはずがございませぬ」とフォローする。だが、一条天皇はさらに「朕は中宮一人、幸せにはできんのですよ」と言葉を重ね、「いい加減に、中宮に気をお遣いになるのはおよしなさいませ」といさめる詮子に、感情を爆発させる。
「そういう母上から逃れたくて、朕は中宮に救いを求め、のめり込んでいったのです。すべてはあなたのせいなのですよ」
「朕も、母上の操り人形でした。父上から愛でられなかった母上の慰みものでございました」
息子の本音を初めて知った詮子は言葉を失い、「私がどれだけ、どれだけつらい思いで生きてきたか…。私が…」「私は父の操り人形で、政の道具で、それゆえ、私は…」と口にするのが精いっぱい。序盤で繰り広げられた父・藤原兼家(段田安則)との確執を思い出すと、詮子の思いもわかるだけに、切なくなる母子のやり取りだった。だが同時に、これまで詮子が兼家と同じ道をたどってきたことも、多くの視聴者が気付いていた。
まひろの子、定子の産んだ皇子、道長の娘・彰子。この子たちもいずれ、親世代とこのように激しく感情をぶつけ合うときが訪れるのかもしれない。その点では、今は内気すぎる彰子が、今後どのように変わっていくのかも気になるところ。そう考えると、物語をより楽しむため、少しばかり史実をひもとき、子どもたちの行く末を頭に入れておくのも、面白いのではないだろうか。
(井上健一)