『リトル・ワンダーズ』(10月25日公開)
「不死身のワニ団」を結成したアリス、ヘイゼル、ジョディの悪ガキ3人組。彼らは倉庫から最新ゲーム機を盗み、遊ぶ気満々だったが、テレビにロックがかかっており、パスワードが必要になった。
風邪をひいて寝ているママからパスワードを教えてもらう交換条件としてブルーベリーパイを買ってくる約束をした3人だったが店は休みだった。仕方なく自分たちでパイを作ろうとしたものの、材料の卵を謎の男に横取りされてしまう。
卵を奪い返そうと男を追いかけるうちに怪しげな森の一軒家にたどり着いた3人は、魔女が率いる謎の集団「魔法の剣一味」と遭遇する。魔女の娘も仲間に加わり、彼らは悪い大人たちに立ち向かうが…。
パイの材料を手に入れるための冒険に出た悪ガキ3人組が、思わぬ戦いに巻き込まれていく姿を、16ミリフィルムで撮影したアドベンチャー映画。監督・脚本は本作が長編デビューとなるウェストン・ラズーリ。カンヌ国際映画祭をはじめ、各国の映画祭で好評を得ている。
子どもたちを主人公にした現代の寓話(ぐうわ)的なジュブナイルものだが、16ミリフィルムで撮られたためか、画調は1970年代や80年代の映画を思わせるものがあり、ストーリー的にも『グーニーズ』(85)や『スタンド・バイ・ミー』(86)をほうふつとさせるものがあった。ワイオミングの夏の風景も美しい。
子どもたちの目的は、ただ「ゲームがしたい」「卵が欲しい」「ママの病気を早く治したい」というシンプルでかわいらしいなものだが、ペイント銃やバイクといった小道具も含めて、天使と悪魔が共存したような彼らは、決して“いい子”ではないところが面白い。思わず自分の子どもの頃を思い出して懐かしい気分になった。
長編デビュー作らしい新鮮さと芸術的な感性が融合したこの映画を見ると、ラズーリ監督の今後に期待が湧く。
(田中雄二)