先日、バレンタインの週にゲストに呼んでいただいたラジオ番組で、「ラブソングにまつわるキュンエピソードを教えてください」というアンケートがありました。仕事柄、アンケートというものを、本当によく書きます。トーク番組出演の前には、必ずアンケートがありますし、雑誌のインタビューや取材の前にもアンケートがあるので、答えるのも、比較的得意だと自負しています。しかし、このラブソングにまつわるキュンとしたエピソードには、とても苦戦しました。なぜなら、ラブソングに共感するような恋愛のエピソードがほぼゼロだったからです。
一般的に恋愛の時に、脳内には、オキシトシンという〝幸せホルモン〟などといわれるホルモンが出るそうです。オキシトシンは、目の前の相手に共感したり、その人のためになんでもしてあげたいと思うような気持ちにさせるそうなので、確かに、恋愛の時の気持ちの源になっているような気がしますよね。ただ、実は、このホルモン、生物としては本来、親が子に相対した時や、スキンシップを取る時に出るホルモンなんだそうです。恋愛でこのオキシトシンが出るのは「脳のバグである」という説を、脳科学者の方の書いた本で読んだ時は、なるほどと思いました。
私は、おそらくこのバグが、やや少ないタイプの人間なのだと思います。なので、いわゆるラブソングの幸せホルモンが溢(あふ)れる歌詞にどハマりするということがなかったのでしょう。
ただ産後は、オキシトシンが本来の使い道の通りに、稼働していたようで、生まれて初めて、ラブソングに深く共感し、ラブソングを理解することができました。ずっと理解できなかったことが、理解できるようになる「目から鱗(うろこ)」の体験を、これほど鮮やかに感じさせてくれたのは、オキシトシンとラブソング以外になかったと記憶しています。
結局アンケートには、私とラブソングの歴史には、こういった流れがある旨と、キュンの定義を恋愛ではなく、推し活や、親子愛や友情などの分野まで、やや拡大解釈し、お答えしました。
アンケートは自分の人生の棚卸しをさせてくれることもあるので、ありがたいですね。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 8からの転載】
ひらい・りお 1982年東京生まれ。2005年、慶應義塾大学法学部卒業後、フジテレビ入社。スポーツニュース番組「すぽると!」のキャスターを務め、オリンピックをはじめ国際大会の現地中継などに携わる。13年フリーに転身。ニュースキャスター、スポーツジャーナリスト、女優、ラジオパーソナリティー、司会者、エッセイスト、フォトグラファーとして活動中。