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井上芳雄、トップを走り続けてきた22年「努力することで、生きていることを実感できる」【インタビュー】

-お話を聞いていると「舞台俳優としての自分」は揺るぎないんですね。舞台にこだわるのはどんなところに魅力を感じているからなのですか。

 反応が欲しいのかなと思います。映像のお芝居だと、その場で視聴者の方の反応を感じられないので、頑張り方が分からない。その場にいる方たちに向けて何かをやりたいんだと思います。それから、あとは単純に劇場が好きなんです。稽古はあまり好きじゃないですが(笑)。

-デビューから22年がたちますが、改めて、俳優生活を振り返ってみて、どんな思いですか。

 よく頑張ったなと思います。コロナ禍で公演が中止になったことはありましたが、基本的にはずっと止まらずに走り続けてきました。ミュージカル以外のこともたくさんやらせていただいて、そういう意味では、できないことをできるようになりたいと頑張った20年間です。それは今も変わりません。もちろん、全てのことができるわけではないし、できるようになるまで時間が掛かることもあるし、時間が掛かってもできないこともあります。でも、できるようになろうと努力することで、生きていることを実感できるんです。人間はいつか死ぬので、できるだけ濃く生きたいと思いますし、生きている感覚を強く感じていたいんです。

-そうした努力を続け、ミュージカル界のトップを走り続けるモチベーションはどこにあるのですか。

 トップかどうかは見方によるので自分では分かりませんが、ミュージカル界は僕にとっては“ホーム”ですし、言い方は悪いですが“ぬるま湯”でもあると思うんです。だからこそ、ずっとぬるま湯にいるだけではいけないという思いがあります。ぬるま湯の温度が下がったら、めちゃくちゃ熱いお湯に入って、それを持って帰ってきて温度を保ち、逆にぬるま湯の温度が上がりすぎたら水風呂に飛び込んで水を持ってくる。そんな感覚です。それは自分で望んでそうしているのかは分かりませんが、でもそうすることでずっとぬるま湯に漬かっていられるんだと思いますし、そうありたいと思っています。

-そうすることが、自分の成長もつながると。

 自分のことを過大評価しているんだと思います。もっとうまくできるはずだ、もっとうまく回せるはずだと、いまだに思っています。さだまさしさんが「永遠に歌がうまくなりたいって思っている」とおっしゃっていましたが、自分もそうありたいですね。

(取材・文・写真/嶋田真己)

ミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ」

 ミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ」は8月14日~17日に都内・シアター1010、8月19日~22日に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、8月24日~31日に都内・シアタークリエで上演。「リーディングプロジェクト」は9月16日~19日に都内・草月ホールで上演。
「ダディ・ロング・レッグズ」公式サイト https://www.tohostage.com/ashinaga/
「リーディングプロジェクト」公式サイト http://readingprostage.com