-ところで、頼家から見ると、主人公の北条義時に裏切られた形ですが、義時役の小栗旬さんとの共演はいかがでしたか。
小栗さんの存在は、僕にとってものすごく大きかったです。思ったような芝居ができず、僕が自信をなくしていたとき、それが伝わったのか、忙しい小栗さんがわざわざ時間を割いて、2人きりで食事に誘ってくれたことがあるんです。そのとき、小栗さんが「自信を持って大地の好きなようにやればいい。自分の芝居に納得できず、言いづらかったら、俺に言ってくれれば、俺が『もう一回やりませんか』って言うから。なんでも言ってくれ」と言ってくださって。
-それは、すごいですね。
現場を止めることになるので、そんなことは普通なかなか言えませんが、その言葉のおかげでどこか気持ちが吹っ切れて、義時と2人の芝居でも、もっとぶつかっていこうと思えるようになりました。あのときの小栗さんの優しさには、本当に救われました。現場でも、僕の芝居に配慮して「このせりふ、俺がどう言えば、言いやすい?」と、一緒に考えてくださったこともありますし…。小栗さんがいなければ、演じられなかった部分はたくさんあったと思います。
-そうやって演じてきた頼家に対して、視聴者の反響も大きかったと思いますが、どう受け止めていましたか。
「頼家やばい」という意見もありましたが、その一方で「かわいそう」「切ない」という見方をしてくださる方もいて、頼家の苦悩がきちんと伝わっていることが分かってうれしかったです。
-その中で、特に印象に残ったものは?
びっくりしたのが、第29回で頼時(坂口健太郎)に“泰時”への改名を命じた場面、僕の振り向く芝居がネットのニュースになったことです。実はあれ、かなり苦戦したんです。監督から「きつくにらんでほしい」と言われていたんですが、何回やっても「もうちょっと怖く」「もうちょっと気持ち悪く」と、なかなかOKが出なくて。小栗さんも「こうやったらいいんじゃない?」といろいろ相談に乗ってくださった結果、出来上がったシーンだったんです。まさか記事になるとは思っていませんでしたが、「シャフ度」と呼ぶことも分かって面白かったです(笑)。
-この作品への出演は、金子さんにとってどんな経験になりましたか。
初めての大河ドラマで源頼家という役を演じさせていただき、かけがえのない経験ができました。本当にいい作品に出会えたと心から思っています。ずっと自信が持てず、「これでいいのかな?」と不安を抱えたままやっていましたが、小栗さんをはじめとする共演者の皆さんやスタッフ、監督の皆さんのおかげで演じ切ることができました。皆さんの力で、作品がこんなによくなるんだと改めて実感しました。そういう熱量のある作品に参加できたことが、一番の幸せです。これからも、どんな作品にも熱量を持って取り組んでいくつもりです。
(取材・文/井上健一)