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門脇麦、「この舞台以上に“五感で楽しむ”という言葉が適している舞台はない」【インタビュー】

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 映画『浅草キッド』のヒロイン役や、映画『ほつれる』、ドラマ「リバーサルオーケストラ」で主演を務めるなど、数多くの映像作品で演技派女優として活躍する門脇麦。彼女が2020年に出演した舞台「ねじまき鳥クロニクル」は、世界中で絶賛される村上春樹の代表的長編小説を世界初の舞台化した作品として大きな話題を呼んだが、新型コロナウイルスの影響を受けて途中で公演中止となった。今回、その再演が11月に幕を開ける。主要キャストは初演に引き続き、成河と渡辺大知が主人公・岡田トオルを演じ、門脇は女子高生・笠原メイを演じる。今回は、門脇に初演の思い出や再演の見どころなどを聞いた。

門脇麦(ヘアメーク:伏屋陽子(ESPER)/スタイリスト:高野智史)(C)エンタメOVO

-初演を振り返ってみての思い出はありますか。

 演出家のインバル・ピントさんが得意とするのはダンサーの方を交えて、人数がいる空間をムーブメントと一緒に作っていくことだと思います。そこが一番彼女のセンスが発揮されるところだと思うので、稽古場でその様子を見ているのが面白かったです。稽古はワークショップみたいな感じで、インバルさんは日本語が分からないからこそ言葉だけじゃなく、ニュアンスと雰囲気をみんなと大切にしていきたいという気持ちもあって、最後までインバルさんも演出を固めようとしていなかった気がします。

-村上春樹作品の魅力をどのように感じていますか。

 非現実的なことを描くからこそ、現実がさらに大きくなって戻ってくる、というところが魅力なんじゃないでしょうか。リアルなことをリアルに描くよりも、仮の設定を置いた方が、感情が日常より大きくなるというか、物語が動くというか。村上さんはそういうことの魔術師な気がします。

-その村上春樹作品を舞台化することについて、どのように思いましたか。

 村上さんの作品は、独特な日本語の言い回しで作り上げられていると思うんです。インバルさんは日本語以外で原作を読んでいらっしゃるんですが、たぶん村上さんの独特の言い回しって訳せないと思うんです。だから自分が感じた雰囲気よりも、日本語を話せない方が村上作品を読んで、どういうエッセンスを受け取ったのか、そしてそれを体現することの方がこの舞台では大事だと考えています。稽古も日本語でのやり取りができなくて、英語でやり取りをするか、通訳の方を介してやり取りをするかだったんですけど、そうやって日本語が削除された世界の中で残る物って、逆に大事な骨組みしか残らなくて、それがすごく面白くて、不思議でした。

-再演にあたって、どのような心境ですか。

 私は再演というもの自体が初めてなんですけど、前回は途中で終わってしまったので、みんなとても悔しい気持ちで泣いていました。だから、こうやって再演が決まって、またみんなで集まれるというのは幸せなことです。この作品に関わった人全員にとって、やっとまた動き出すという気持ちがきっとあると思います。

-再演が決まってからキャストの方とどのような話しをしましたか。

 再演のポスター撮影の時に成河さんと渡辺くんとお会いしたんですけど、2人とも元気そうでした(笑)。その時に、再演に対してどのような気持ちで臨めばいいのかというお話をしたら、成河さんが、「本当にフラットに、もう1回始まるだけで、そうなると思うよ」とおっしゃっていました。

-再演に対しての意気込みは?

 初めての方も、前回も見に来てくださった方もいらっしゃると思うので、みんなでパワーアップしていかなければと思っています。先日、台本を頂いて、結構変わっている箇所もあったんですけど、それはとてもいい方向性の変化だなと感じました。印象としてはテンポが良くなり、スリムになって、見やすくなっています。