宮藤官九郎が企画・監督・脚本を手掛けたドラマ「季節のない街」が、毎週金曜深夜24時42分からテレ東系で放送中だ。本作は、山本周五郎の同名小説をベースに、舞台となる“街”を12年前に起きた災害を経て建てられた仮設住宅のある“街”へと置き換え、現代の物語として再構築。希望を失った主人公が住人たちの姿に希望を見いだし、人生を再生していく青春群像エンターテインメント。
主人公の半助こと田中新助役を池松壮亮が演じ、街の青年部を率いる親思いのタツヤ役を仲野太賀、街の近所に住む酒屋の息子で、好きな女の子目当てで街に出入りしているオカベ役を渡辺大知が演じる。このほど、宮藤と渡辺が取材に応じ、撮影時のエピソードや物語への熱い思いを語ってくれた。
-本作は、宮藤さんが20代の頃から切望していた企画とのことですが、制作に至った経緯や思いを教えてください。
宮藤 30年前、僕がまだ演劇を始める前に原作の小説と、その小説を黒澤明監督が映画化した『どですかでん』という作品に出合って、やみくもにエネルギーを感じました。その後、僕が『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019年)の脚本を担当した後にコロナ禍になり、世の中がストップしたときに、何かやり残したことがあるような気がして、この企画を提出しました。原作は昭和30年代に新聞小説で発表されて、親子や貧困の問題をテーマに扱っているのですが、普遍的だから通用しない話は一つもないなと思って。当時はスマホもない時代ですし、人間の生活スタイルは変わっていますが、根っこの部分は変わっていないので、今の人が見たらより刺さるのではないかなと思いました。
-渡辺さんは、オファーを受けたときのお気持ちはいかがでしたか。
渡辺 企画を聞いたときは、まだコロナ禍で鬱屈とした空気が流れている頃で、僕自身もまさにこういうドラマが見たかったと思わせてもらいました。登場人物たちが明るく生きているわけでも、暗く生きているわけでもなく、ただその日その日を人間らしく生きている姿が描かれた人間ドラマだったので、僕もそこに救われた気持ちになりました。
-オカベという役柄については、どのように捉えて演じましたか。
渡辺 僕は映画『どですかでん』を見たことがあったのですが、オカベは『どですかでん』の中では、そんなにフィーチャーされるようなキャラクターではなかったはずなのですが、なぜかすごく覚えていたので、なんで覚えていたんだろうというとこかろから考えました。このポジションのキャラクターが持っている魅力を、このドラマでも大事にできたらいいなと思いましたし、あまり前に出なくても、なんかあいつ覚えているな、みたいな存在感がある役になったらいいなと思いました。
-宮藤さんは演出で心掛けられたことはありますか。
宮藤 仮設住宅のある“街”は茨城県の行方市に実際にオープンセットを作って、みんなで本当にそこに暮らしているかのように撮影できる環境を整えてもらえたので、それを何とか映像に残せないかなと思いました。最初は仮設住宅のプレハブの中のシーンはスタジオで撮影するものだと思っていたのですが、室内までセットを作っていただけたので、みんなが近所で実際に暮らしているような空気感が映るといいなと思いながら撮影して、結果、映ったような気がします。