-普段は、1日中芝居のことを考えているタイプですか。それとも、稽古場を出たら切り替えるタイプですか。
切り替えたいとは思っていますが、心の中に漬物石のようにずっと芝居のことがあるんですよね。今は朝から晩まで常に芝居のことを考えてしまいます。この間は、湯船に漬かりながらながら台本を読もうと思って、ボーッと芝居のことを考えながらお風呂の用意をしていたら、なぜか枕を持って入ろうとしていたことがありました(笑)。頭のどこかにずっと芝居のことがあって、それ以外のことはボーッとしてしまっているのかもしれません。
-東出さんがそれほどまでに熱中しているという芝居の魅力をどこに感じていますか。
共演者とばっちり息があったときや、自分がその役にフッと入り込んで、何も雑音がない中で、その役の気持ちとして話しているときは、一つの真理に手が届いた気がします。そうしたことが常に繰り広げられている芝居を目指して、稽古を重ねているのだと思います。
-ところで、登場人物が「ハイ・ライフ」、いわゆる上流社会を夢見て一獲千金を狙うという本作にちなんで、東出さんが今、夢見ていること、こうなりたいと思い描いている未来や目標はありますか。
とりあえず、今年の冬は、小屋を完成させたいなと思ってます(笑)。ただ、12月6日までこの公演があるので、なかなか難しい感じになってきていて。
-東出さんが滞在する山間部の家で、冬に小屋が完成しなかったらまずい状況なのではないですか。
やばいんですよ、本当に(笑)。仲間にも、冬までには絶対に完成させると言っていたのですが、もう冬がきちゃう(笑)。今は、たまに休みがあっても小屋どころではないので、頑張らないといけないです。切実ですね。
-今の小屋の話もそうですが、東出さんは狩猟生活やひろゆきさんとの配信番組「世界の果てに、ひろゆき置いてきた」でも注目されています。そうした経験を通して、仕事に対しての思いに変化はありましたか。
それはないと思います。この数年は、自分にとって役者は「仕事」で、人前で別人を演じてお金をいただくのだとシンプルに考えればいいんだと思っています。それ以外は、何でもいいと思っているので、聞かれれば山での生活も隠さず話しますし、旅番組もそうです。特に隠すことでもない。とにかく僕が考えているのは芝居のことばっかりなんですよ。ただ、その芝居がよくなかったら、目も当てられない。とにかく、頑張るべきは芝居です。
(取材・文・写真/嶋田真己)
まつもと市民芸術館プロデュース「ハイ・ライフ」は、11月23日~26日に長野・まつもと市民芸術館 実験劇場、12月1日~6日に東京・吉祥寺シアターで上演。