-といっても、予想通りにはいかないのでは?
いきませんね(苦笑)。でも、それが面白くて。途中、それぞれが手に入れた事件の証拠を出し合う時も、「誰から行く?」みたいな駆け引きがあるんです。例えば、自分が有利な証拠を持っていると思えば、できるだけ後で出したい。そう思ってタイミングを見計らって出してみたら、他の人がさらに有力な証拠を出してきて、当てが外れたり…。しかも皆さん、「台本があるのでは?」と思うくらい、「それを出すなら、次はこれで」といろんな証拠をスムーズに出してくるので、感心しっぱなしでした。
-終わった時はだいぶお疲れになったのでは?
疲れましたね…。ただ、アドレナリンが出ていた上に、終了後には映画の最後に流れるアフタートークも撮ったので、高揚感はありました。おかげですぐに寝付けなかったので、ホテルの大浴場に行き、「すごい1日だったな…」と撮影を振り返っていました(笑)。
-撮影終了まで、他の共演者と撮影以外で会う機会はなかったのでしょうか。
撮影は2日間あり、1日目が事件発覚から解決までを完全にアドリブで演じるメインのパートとアフタートークまで。2日目は、事件以前のシーンと途中に挿入される回想シーンの撮影で、普通にお芝居する形でした。だから、何も隠す必要のない2日目は、皆さん解放感いっぱいで、空き時間には写真を撮り合ったり、「あのときはああだった」「あれは面白かった」など、前日の撮影をワイワイ振り返ったりしていました。まるで、みんな一緒に何かを成し遂げた体育祭の後のような絆が生まれていましたね(笑)。
-今までにない経験だったと思いますが、本作を通じて新たな発見はありましたか。
完成した映画を一緒に見た夫が、「自然体でその場にいる姿が、今までで一番いい」と褒めてくれたんです。そういうリアルなお芝居ができたおかけで、私自身も自分がどんな顔で人の話を聞いているのか、どんなふうにリアクションを取るのか、客観的に見ることができ、自分のお芝居を見つめ直すいい機会になりました。この経験を生かして、よりいいお芝居ができるようにしていきたいです。
-お客さんにお勧めの楽しみ方はありますか。
ぜひ、犯人が誰なのか、一緒に考えながらご覧になってください。皆さん同様、演じている私たちも分かっていませんから(笑)。そんな作品は他にないので、今までにない楽しみ方ができるはずです。そして、私が特にお勧めしたいのは、結末を知った上でもう一度ご覧になることです。そうすると、「このときこう思っていたのか」「よく隠し通しているな」と、演じる側の気持ちが想像できて、また違った面白さがあるはずです。ぜひ何度も味わってみてください。
(取材・文・写真/井上健一)