-役柄を演じて、ご自身が考えたことや得たものはありますか。
妻夫木 「何のために生きているのか」ということを、より一層考えるきっかけになりました。結婚して子どもができるまではそういうことを考えなかったですし、役者という仕事が好きで、それにまい進するのみと思っていました。言ってみれば、いつ死んでもいいなと思っていたところがあったのですが、今は家族ができて、逆に死ねないなと思っているんですよね。僕は家族のために生きているんだなと、より一層身に染みて感じました。この作品を通じて、改めて「今を生きる」ことが大事なんだ、この1分1秒を生きていることがとても貴重なことだし、例えばコ-ヒ-を飲んでいるその瞬間だけでも、ああおいしい、いい香りだなと幸せを感じられるようになった気がします。
渡辺 この作品は、自殺まで考えるほど追い込まれている陸が再生していく物語だと思っているんです。幸せって、そんなに大きなものではなくて、夜寝る前に布団の中に入ったときに「ああ、幸せ」と感じる、その瞬間の積み重ねであって。北川さんもつらいことや苦しいことがある中で、そういう小さな幸せを日々見つけて生きていらっしゃるんだろうなというのを脚本の中に感じました。僕自身も、例えば、大きな作品に出演できました、それで評価していただきましたとか俳優としての部分はありますが、日々の中にあるさまつな幸せは僕やみんなの中にもあるものですし、それはこのドラマの中にたくさん描かれている気がします。
-劇中で成瀬は病院を抜け出し、陸と共にバイクで人生最後の旅に出ますが、お2人は人生最後にどんなことをしたいと思いますか。
妻夫木 海外の作品に出てみたいとか欲望は山ほどありますが(笑)、結局、最後は家族のことになりますね。僕が死ぬときは子どもたちはいくつなんだろうとか、毎日変化していく子どもたちを見ているとやりたいことばかりですが、死ぬ瞬間に子どもたちの顔が見られていたらいいのかな、近くにいられなくても、みんなが元気だったらいいのかなと。何が起きるか分からない世の中ですし、今は本当にそれだけです。
-お子さんには、どんな道を歩んでほしいという思いがありますか。
妻夫木 子どもたちが大人になる頃には、もう少しグロ-バルな世の中になっている気がするので、それに向けて一緒に準備できることがあれば手助けしてあげたいなと思いますし、親としてやるべきことはたくさんあると思います。でも、親がいくら用意してもどう育つかはその子自身ですし、やりたいかどうかをチョイスするのは子どもたちなので、一概に「こう育てよう」とは思っていないです。いつの世の中でも同じだと思いますが、健康で元気でいてくれたら、もうそれで十分です。
-渡辺さんは人生最後に、どんなことをしたいですか。
渡辺 僕は成瀬と一緒ですね。考えても何も思い浮かばないというか。日々の瞬間の積み重ねが人生なので、例えば1つの作品をやっていても、すごく大変な日もあれば楽しい日もあるし、でも、それが積み重なることで作品になっていくというのが、もっと大きい意味で人生になっていくので、無駄な1日もたくさんありますが、そうやって積み重ねていくんだろうなと思います。
ドラマは、5月6日(月)夜8時からテレ東系で放送。