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飯豊まりえ「舞台をやるなら、厳しい環境で勉強したいと思っていました」シェークスピアの名作に挑む思い『ハムレットQ1』【インタビュー】

飯豊まりえ(C)エンタメOVO

-お芝居で映像作品との違いを感じる部分も?

 映像ならカメラが寄ってくれるので、口に出すことなく表情で伝えられるところも、舞台の場合、言葉にしないと伝わりません。特にこの作品は、シェークスピアということもあり、せりふが多いんです。その点、森さんが「こういう言い方をした方が、見ている人がイメージしやすい」と演出をつけてくださるので、なるべく心地よく、伝わりやすいように、と発声を心がけています。

-女性の吉田羊さんがハムレットを演じるのも、この作品の特徴です。

 羊さんは「女性ならではの繊細な部分も出るのでは」とおっしゃっていて、そういう部分を森さんと一緒に常に探られている印象です。

-稽古中の吉田さんの印象は?

 羊さんは、お稽古のとき、率先してご自身が考えてこられたお芝居を演じられるのですが、森さんから「こうしてほしい」とお話があると、すぐに切り替えて応じられていて。私も「まずは自分の考えてきたお芝居を試してみよう」と思うことができました。

-座長としての吉田さんはいかがでしょうか。

 羊さんは、常に一番早くお稽古場に来られて、終わってもしばらく書き物をされています。お稽古では、大きな声で「こうしよう」とお話しされるのではなく、みんなが萎縮することのないように、場を和ませてくださるんです。おかげで、緊迫した物語にもかかわらず、稽古中に笑いが起きたりして。それはやっぱり、羊さんが柔らかい雰囲気をお持ちでいらっしゃるからだと思います。

-Q1、Q2、F1と呼ばれる三種類のハムレットのうち、今回はQ1版の上演ですね。

 Q1は、現在もっとも上演されている4時間くらいあるF1版と比較するとぎゅっと凝縮したような内容です。刈り込むことで感情の流れがわかりやすくなり、「ここで間を取りたい」というところに時間を使える。それによって、お客様に考えてもらう余白が生まれるのが、Q1の魅力だと森さんからお聞きして、自分の中で自由度が上がりました。

-映画やテレビドラマなどの映像作品と異なり、観客の反応がその場で返って来るのも舞台の特徴です。

 最近は、ドラマや映画を倍速で見たり、途中で止めて後で続きを見たり…という方も多いと思いますが、舞台はその場の空気感や芝居の間まで含めて同じ時間を劇場にいる全員が共有するので、とても贅沢な時間だなと思います。私も普段、舞台を観劇するときは、そういう時間を楽しんでいます。お客様の表情や反応がどんなふうに見えるのか、楽しみにしています。

-最後に、公演を楽しみにしているお客様へのメッセージを。

 ハムレットの軸にあるのは復讐劇ですが、森さんは「赦し」というテーマを大事にしたいとおっしゃっていました。完全な悲劇でないところが、今回の『ハムレットQ1』の特徴です。その点に注目いただき、私たちの新たな『ハムレットQ1』をぜひ楽しんでください。

(取材・文・写真/井上健一)

『ハムレットQ1』は5月11日から6月2日まで東京・PARCO劇場のほか、大阪、愛知、福岡で公演