-撮影では実際にどのような工夫をされているのでしょうか?
塚原 現在の端島では廃墟の撮影しかできないので、本作ではCG技術を駆使して再現しています。空撮の画角で端島を再現するときには、セットの一部を映像として貼り付けるようなかたち。島を15個ほどのピースに分けて、「レゴブロック」のようなイメージで円形の島にはめ込んで、それと現代の端島をドローン撮影して全景として見せています。
野木 実景で島のシーンを撮る際も、島そのものを探すのではなく、港や通りなど、パーツごとに必要な部分を探して組み合わせていると聞いて…これは本当に大変なことを始めてしまったなと。
塚原 今回の撮影現場での勝負は、CGを使いながら、いかにリーズナブル&スピーディーに進行できるか。通常は主体をグリーンバックで撮影して、後からCGを合成する手法を使いますが、それには時間も予算もたくさんかかる。連続ドラマの10本の制作スピードには到底間に合いません。なので、今回は現存の端島の寸尺に合わせてCGを先に作って、現場でその角度に合わせて撮影するという方法に挑戦。時間と予算の制約によって、これまで連続ドラマでCGを使ったダイナミックな映像制作を行うのは難しかったのですが、このやり方が上手くいけば、今後の新しい撮影手法の先駆けになるのでは…という淡い期待を込めています。ある意味新たなチャレンジ企画でもあるので、温かく見守っていただけたらうれしいです。とにかく野木さんが次々といろいろと書いてくるから大変で…(笑)。
野木 「とりあえず書いて」って言われるから、とりあえず書いてるんですよ!(笑)その上で塚原さんと相談はしてるし、かなり直してはいるんだけど…。
塚原 いつも美術部さんが新しく出来上がった台本を見るとき、まずは香盤表を広げて柱書きを確認するのですが、新しい柱書きが出てくると一度台本を閉じて天を仰ぎ、一息ついて「どこでやるんですかこれ…?」って(笑)。「…考えよう!」と言いながら、みんなで知恵を振り絞っています。でも、『ラストマイル』も同じチームで乗り越えたので、本作もなんとかなると信じています!
野木 台本は全て仕上がっていますが、現代に存在しない風景を生み出すために日本各地で撮影をしているので、効率的に進めないと時間が足りない。そんな厳しい撮影現場では、スタッフさんたちが映像を作るために奔走し、総監督の塚原さんが指揮を執りながら一丸となって制作してくれています。
小さな土地に高層ビルが立ち並び、当時、世界一の人口密度を誇った端島がどう映像化されるのか、私自身も仕上がりが本当に楽しみです。
-お2人の作品では、普段は見過ごされがちな存在にスポットを当てることが多いと思いますが、本作ではその辺りをどう描かれていますか?
野木 取材を重ねる中で感じたのは、元島民の人たちの「端島愛」です。みなさん当時の苦労は語りながらも端島の出身であることに誇りを持っている。その一方で何十年もの間、出身を隠している方もいると聞いて。石炭なくしては成り立たない時代だったのに、炭鉱一般に対して差別的な目線もあったんですね。そうした視点は、主人公の鉄平が故郷の端島を大切にする動機としても自然だろうと、ドラマの中でもそのまま描いています。
塚原 本作では、エネルギー革命時代の職業差別を捉えていますが、過去にも現代にも職業に対する差別や偏見は残念ながら存在します。しかし、誇りを持って仕事をしている人たちにとって悲しいこと。どの職業にも、一緒に働く仲間、やり遂げる楽しさなど、自分の職業を誇りに思える鍵があるはず。そう考えると、今回描いている炭鉱の島で生きていた彼らがどんな表情で生きていたかが、1つの答えになっていくと思います。そこが優しく伝わるように、“職業への誇り”というものを描きたいと思っています。
野木 本作は取材に基づいたエピソードが多いのですが、キャラクター一人一人は誰かをモデルにしているわけではありません。あくまでフィクションなので、フィクションの事件が起こったりもします。1955年から閉山までの端島の史実をベースに、そこで生きる人々を描いた群像ドラマとして楽しんでいただけたらうれしいです。
日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」毎週日曜よる9:00~9:54(第2話は15分拡大、~10:09)