神木隆之介が主演を務める日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)は、1950年代の端島(長崎県)と現代の東京を結ぶストーリーが描かれている。
物語の舞台となる端島は、長崎港から船で約40分のところに位置する、日本近代化の遺構として2015年に世界文化遺産に登録された人工の島。
そんな端島を舞台にした連続ドラマ制作にチャレンジしている脚本家の野木亜紀子さんと塚原あゆ子監督のオフィシャルインタビューが届いた。本作で描く時代背景や新たな挑戦について語った。
-制作にあたって、かなり取材を重ねられたそうですね。
野木 脚本執筆のため、昨年の夏ごろから1年くらいかけて取材をしました。塚原さんとプロデューサーの新井さんは他作品の制作もあり事前取材の参加が難しかったのですが、取材が十分にできないまま描くことはどうしても避けたかったし、1人での取材には限界があるので、長崎県出身の林啓史監督(『いだてん~東京オリムピック噺~』など)に協力をお願いしました。実際に長崎を訪れて元島民の方々への取材を行ったのですが、80代の方が中心で皆さん長崎弁を話されるので、よそ者の土地勘もない私だけで取材に臨んでいたらかなり苦労していただろうなと思います。林さんがいなければ今回の作品は成立していません。
-最初に端島に訪れたのはいつ頃ですか?
野木 実は端島が世界遺産に登録される前に、一度プライベートのバイク旅で訪れたことがありました。当時はまだ観光地化されておらず、「軍艦島ミュージアム」などもなかった頃。なので、島には上陸したのみでした。二度目は(プロデューサーの)新井(順子)さんとたまたま訪れて、元島民の方のガイドを聴くことができ、「これはドラマになるかも」と感じました。島には水源がなく生活がとても困難で、今では考えられないような環境での暮らし。そんな状況の中を生き抜く人たちの姿は、今を生きる人たちにどう映るのかなと思ったんです。このとき新井さんと訪れていたから今回の企画が生まれました。
-日本初の鉄筋コンクリート造りの集合住宅があった端島。建物などの印象はいかがでしたか?
野木 今では本当にボロボロになっていますが、コンクリートの塊がしっかり残っていて、そのビジュアルのインパクトがすごかったです。ただ、ドラマとして当時の端島の風景を再現するには、日本中から似ている場所を探して合成する必要があるわけで……塚原さんが「そもそも似ているところがない!」と苦心しています。
塚原 そうなんです。今まで多くの作品でロケ地を探してきましたが、今回は特に頭を悩ませています。広さでいえば、新宿駅ほどの面積にさまざまな施設が凝縮され、約5000人もの人が集まって暮らしていた端島。そんな特殊な場所は現代には存在しないので、どこで撮影するにしても何かを付け足さないと成立しないんです。
-映像化のハードルがかなり高い作品ですね。
野木 いつもどんなに難しいシーンを描いてもなんとかしてくれる心強いチームなのですが、今回ばかりは本当に難航しているようで。柱書き(台本上で、シーンの場所や時間を指定する箇所)一つ一つに「これは無理だな…」と、無理だらけになったのは初めてのことでした(笑)。
塚原 劇中では島のてっぺんに神社がある設定なのですが、そこでの撮影が一番難しい。同じように島のてっぺんに神社のセットを建てても、背景に映る端島の住居はCGで足さないといけません。さらに、1950年代の“緑がない端島”を再現しなくてはいけないのですが、今の日本に緑のない孤島なんて存在しません(笑)。そんな無理難題を日々どうにか乗り越えています。