コロナ禍以降、テレワークやリモートワークが広がる中で、BCP(事業継続計画)対策や地方創生、従業員のワークライフバランス向上などを理由とする企業の地方移転が増えている。帝国データバンク(東京)はこのほど、2024年に首都圏の1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)と地方間をまたいだ「本社所在地の移転」が判明した企業(個人事業主・非営利法人等含む)について分析を行った。
それによると、2024年に首都圏から地方へ本社を移転した企業は過去最多の363社。対して、地方から首都圏への移転は296社で、首都圏では67社の転出超過となった。大阪府や静岡県などに多くの企業が移転し、業種別ではサービス業が顕著だった。首都圏から地方へ本社を移転した企業数を過去との比較すると、23年(347社)に比べて16社、率にして4.6%の増加で、1990年以降で最多となった。また、1990年以降で初めて4年連続で年間300社を超え、首都圏から地方へと本社を移転する流れが続いている。
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが「5類」に移行して以降、対面営業や従業員のオフィス回帰を促す企業が相次ぎ、いったんは首都圏の企業吸引力が急回復したが、首都圏企業の「地方移転」の動きが強まる傾向があるようだ。
首都圏から地方へ移転した企業の転出先を地域別に見ると、最も多いのは「大阪府」(51社)で、社数としては過去最多。首都圏からの転出先で過去最多(最多タイを含む)となったのは大阪府のほか「静岡県」(34社)、「兵庫県」(21社)など8府県に上り、東京などにアクセスしやすい交通網沿線への移転が目立った。このうち、「富山県」(6社)と「石川県」(5社)はともに首都圏からの転出先として過去最多の社数となった。「福井県」(3社)を含めた北陸3県は、北陸新幹線の開業以降、北陸地方と首都圏のビジネス面の結びつきが強まる中、北陸地方への拠点移設や研究開発拠点の拡充といった投資が実施しやすくなったことも大きな要因とみられる。
業種で見ると、首都圏から地方へ転出した企業の業種は、「サービス業」が151社で最多。その中でも「経営コンサルタント業」が22社と目立った。
帝国データバンクは、「2025年の首都圏における本社移転は、政府による地方創生に向けた議論が再び加速する中、災害に備えた首都圏以外への本社機能分散やバックアップ拠点の確保といった動きも加わり、転出超過トレンドが続く可能性がある」と指摘している。