3月前半。年度末を目前に控え、仕事が一気に立て込む時期です。予算の締めや評価、人事異動の準備など、気の抜けない日々が続いている方も多いのではないでしょうか。管理職の方であれば、自分の業務だけでなく、部下や組織全体のことまで考えなければならず、なおさら気が張る季節です。
日差しは少しずつ春らしくなってきましたが、この時期は花粉の飛散もピーク。なんとなく体が重く、気持ちも落ち着かない。春が近づいているはずなのに、どこか余裕がない。そんな感覚を抱いている方も少なくないのではないでしょうか。
そんなとき、ふと「温泉に行きたい」と思う瞬間はありませんか。仕事の数字やプレッシャーから少しだけ離れ、静かな湯に身を委ねる時間は、忙しい日々の中で心と体を整える貴重なひとときです。
今回は、そんな日常からいっときでも離れるのにピッタリな温泉宿「秋保(あきう)温泉 曽良一(そらいち)」をご紹介します。


宮城県仙台市に湧く秋保温泉。仙台市街から車でおよそ30分とアクセスがよく、古くから「仙台の奥座敷」として親しまれてきた温泉地です。山あいを流れる名取川沿いには、100室を超える大型旅館やホテルを中心に十数軒の宿が立ち並び、落ち着いた温泉街の風情をつくり出しています。
今回ご紹介する「曽良一」は、温泉街の中心にある「秋保温泉 湯元」バス停の目の前に立つ和風旅館です。創業130年以上という長い歴史を持ちながら、昨年リニューアルされたばかり。館内に入ると、新しい木の香りに包まれ、伝統的な和の雰囲気を大切にしながらも、現代的な快適さを取り入れた和モダンな空間が印象的です。大型旅館が多い秋保温泉の中で、客室は全16室。小規模ならではの静けさと落ち着きがあり、ゆったりとした時間を過ごすにはぴったりの宿です。
館内には、男女別の大浴場が2カ所と、貸し切りで利用できる家族風呂(要追加料金)が用意されています。


大浴場の一つ「磊々の湯(らいらいの湯)」は、広々とした内湯と露天風呂を楽しめるお風呂で、巨大な自然石を配した野趣あふれる造り。露天風呂に身を沈めると、山の香りを含んだ風が心地よく通り抜けていき、秋保の自然を感じながら、ゆったりと湯浴みを楽しめます。

もう一つの大浴場「里の湯」は、内湯のみの小さなお風呂。5人ほど入ればいっぱいになる湯船に、レトロなタイルの床と石壁という素朴な造りですが、こちらの魅力は「100%源泉掛け流し」。秋保の源泉をそのまま楽しめる、温泉好きにはうれしい湯使いです(磊々の湯は掛け流し・循環併用)。
泉質はナトリウム―塩化物泉。無色透明のお湯からは、ミネラルを感じさせるほのかな鉱物の香りが漂います。舐(な)めてみると、ほんのりとうま味を感じる塩味で、まるで上品なお吸い物のような飲み口です。少し熱めの適温に整えられた湯船につかると、最初にピリッとした刺激があり、その後すぐにスーッと肌になじんでいきます。ツルツルとなめらかな感触の中に、わずかなキシキシ感も感じられ、成分の濃さと湯の新鮮さが伝わってくるようです。体の力がゆっくりとほどけていくような感覚が広がり、湯上がりには体の芯までしっかり温まり、じんわりとした幸福感に包まれました。
食事は、地元宮城の食材をふんだんに使った会席料理。海鮮尽くし会席、お肉尽くし会席、秋保ワイナリーのワインと合わせるペアリングディナー(イタリアン)など、好みに合わせてコースを選ぶことができます。プランによっては部屋食も可能で、落ち着いた空間でゆっくりと食事を楽しめます。



私が宿泊した際は、部屋食のお肉尽くし会席プランを選びました。メニューは、マグロとタイのお刺身に始まり、仙台麩(ふ)の味噌(みそ)だれ、鴨肉のお鍋、白石うーめんなど、宮城らしい料理が食卓を彩り、しばらくすると、メインの仙台牛ステーキが登場。特製の味噌だれとの相性もよく、思わず箸が進みました。その後も牛ほほ肉のとろとろ煮などが続き、デザートの果物まで、満足感の高い夕食でした。

3月は季節の変わり目であり、花粉や仕事の忙しさなども重なって、心身ともに疲れが出やすい時期です。そんな時こそ、週末だけでも日常のプレッシャーから少し離れ、温泉宿でゆっくり過ごしてみてはいかがでしょうか。静かな宿で温泉と食事に集中する時間は、思っている以上に心と体を整えてくれます。帰り道、ふと気づくと体が軽くなっている。そんな感覚を味わえるかもしれません。
秋保温泉の「曽良一」は、忙しい日々の合間に、静かな回復の時間を与えてくれる素敵な宿でした。
【秋保温泉 曽良一】
住所 宮城県仙台市太白区秋保町湯元薬師108
電話番号 022-398-2711
【泉質】
ナトリウム-塩化物温泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)/泉温52.2度/pH:8.0/湧出状況:混合泉/湧出量:不明/加水:あり、なし/加温:なし/循環:あり、なし/消毒:あり、なし ◆掛け流し・循環併用(磊々の湯) ◆完全掛け流し(里の湯)
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,800以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)









