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才能のみならず心も広い エムバペ選手がたたえられている理由

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 大いに沸いた2022年サッカーW杯カタール大会。ドイツやスペインなど優勝経験のある強豪国を制して16強入りした日本代表チームは、FIFAランキングでも20位にランクアップ。興奮冷めやらぬサッカーファンは多い。壮絶な試合になったフランスとアルゼンチンの決勝戦、メッシの歓喜あふれる笑顔と、話題は続いているが、フランスでは、エムバペ選手の高潔さをたたえる記事が続いている。

 きっかけは、決勝戦の直後に路上生活者の支援などに取り組むフランスの「ピエール神父財団」がフェイスブックにアップした投稿。「サッカーは人々の友情をつなぐもの。今夜はアルゼンチンとフランスだけでなく、世界中の多くの人がその幸せを味わった」としたうえで、「この決勝の夜を輝かせただけではなく、私たちを何年にもわたってずっと支援してくれている友人、キリアン・エムバペに敬意を表したい」という内容だった。

 フランスでは、パリジャン紙やTF1、BFMなど多くのメディアがこの投稿を取り上げ、エムバペ選手が前回2018年のW杯で獲得した収益のすべてを、障がいのある子どもたちのスポーツ支援をする団体に寄付していたことや、コロナ禍以降、施設の閉鎖などで厳しい状況に置かれた路上生活者のために、このピエール神父財団に多額の寄付をしてきた経緯を説明している。

 2018年当時のForbes誌は、「慈善というのは大抵の場合、多額の報酬を得、年を取り、家族も十分に養ったのちに始める、というお決まりの経緯をたどることが多いが、エムバペ選手は例外のようだ。弱冠19歳(当時)ですでにピッチの外でもリーダーになっている、世界一心の広いサッカー選手だ」とたたえている。当時のTime誌にインタビューされたエムバペ選手は「ぼくはもう十分すぎるほど稼いでいる。一方で生活や病に苦しんでいる人がたくさんいて、彼らに手をさしのべることは、ぼくにとってそんな大変なことじゃない。(寄付をしても)ぼくの生活は変わらないけど、彼らの生活は変えることができる」と答えている。

 寄付に関して、エムバペ選手は自ら公表することはなく、自らが立ち上げた財団や他団体のホームページや、今回のような投稿をきっかけにメディアが報じる一片を知るのみだが、継続的な支援をするサッカー界の若きスターについての心あたたまる報道に、「心も才能と同じレベル」「天使のよう」と多くのコメントが続いている。