カルチャー

新国立劇場でブリテンの傑作「ピーター・グライムズ」上演 孤独と集団心理が交錯する“今こそ観るべき”オペラ

左上より大野和士、R.カーセン、B.ジョヴァノヴィッチ、S.マシューズ、J.シャナハン、N.ピッコロミーニ、渡邊仁美、今野沙知恵、糸賀修平、河野鉄平、齊藤純子、村上公太、吉川健一、大塚博章

 周囲から疑いの目を向けられ、次第に孤立していく一人の漁師。彼を追い詰めるのは、本当に罪なのか、それとも人々の偏見や集団心理なのか――。現代社会にも通じるテーマを描いた20世紀オペラの傑作「ピーター・グライムズ」が、11月23日(月・祝)から新国立劇場(東京都渋谷区)で上演される。

 物語の舞台は、1830年ごろの北海に面した漁村。見習いの少年を死なせた罪に問われた漁師ピーター・グライムズは、事故だったと無実を主張する。しかし、付き合い下手な彼に村人たちは疑惑の目を向け、孤立は深まっていく。彼に思いを寄せる教師エレンが新たな見習いの少年を紹介するものの、その少年も不慮の事故に遭い、村人たちの疑念は一層強まる。追い詰められたグライムズが最後に向かう先は――。

 1945年にロンドンで初演され、作曲家ベンジャミン・ブリテンの名を一躍高めた代表作。孤独な主人公の苦悩だけでなく、集団となった人々が疑念を募らせ、暴走していく姿を描く。SNS上での中傷や同調圧力が問題となる現代にも重なるテーマであり、正義とは何なのか、時代を超えて普遍的な問いを投げかける。

 物語を彩る音楽も聴きどころの一つ。海のうねりや月の光、嵐など、自然の情景を力強く、時に美しく描き出す。オーケストラ作品としても親しまれている名曲「4つの海の間奏曲」は、同作品から編曲された。

 演出・照明を担当するのは、世界の主要歌劇場で活躍するロバート・カーセン。同作品は2023年にミラノ・スカラ座で初演され、現代社会との響き合いを感じさせる演出が高く評価された。主人公のグライムズ役には、スカラ座公演にも出演したテノール歌手ブランドン・ジョヴァノヴィッチ、エレン役には英国のソプラノ歌手サリー・マシューズを起用。指揮は新国立劇場オペラ芸術監督の大野和士が務める。群衆の心理を体現する新国立劇場合唱団の表現にも注目したい。

 公演は11月23日(月・祝)・26日(木)・29日(日)、12月2日(水)・5日(土)の全5回。会場は新国立劇場オペラパレスで、チケットは税込み8250円から3万1900円まで。25歳以下を対象としたS席5500円の優待チケットなどもある。

 また、上演に先立つ11月19日(木)には、カーセンと大野が登壇するオペラトークを開催する。19時から約1時間半の予定。作品の背景や演出の狙いを知ってから鑑賞するのも楽しみ方の一つだ。公演の詳細やチケット情報は、新国立劇場の公式サイトで確認できる。