台湾から日本へのパイナップルの輸入が好調だ。もとは2021年に中国が台湾からの輸入を停止したことが発端だ。中国は「検疫」上の理由を挙げたが、実際は政治的な嫌がらせであることは明白だった。それを受け、台湾は政府を挙げて日本への輸出拡大に努め、日本の業者や消費者も「力になりたい」と応じた。禁輸以前は年間約2100トンだった輸入量が、現在は年間1万8000トン程度と9倍近くに。台湾農業部(農水省)は、日本の輸入業者と協力してさらなる貿易拡大を目指す。
「台湾パイナップルの収穫時期は3月から6月。春とともにやってきて、暑くなっていく季節にぴったりの味」。3月5日から東京ビッグサイトで始まったFOODEX JAPAN 2024(国際食品・飲料展)の台湾パビリオンで、果物や加工製品を生産・製造・販売するDole(ドール)の青木寛社長がアピールした。同社も中国の禁輸をきっかけに台湾パイナップルの輸入に力を入れ始めた。その後、新鮮な味を日本に届けるための品質管理などで試行錯誤を重ねたが、今年はいよいよ本格的な販売攻勢に出るという。「既に1200トンを発注しているが、2000トンくらいに増えそうだ」との青木社長の宣言に、隣に立っていた台湾農業部の范美玲・主任秘書も思わず拍手した。
青木社長によると、もっとも苦労したのは収穫直後から輸送、日本国内での物流過程を経て消費者の手に渡るまで低温で管理するコールドチェーンを確立することだった。「台湾のパイナップルは、芯までさくさくと食べられる。その食感を大切にし、消費者に笑顔を届けたい」と話した。
范主任秘書によると、日本は農産物全体の輸出先としてはフィリピンに次いで2位、果物では1位という。5日の式典では、台湾産果物を使う新レシピの提案として、パイナップル入りと、ドラゴンフルーツ入りの2種類のフルーツティーを用意。青木社長と乾杯した范主任秘書は「今、検疫などの手続きを進めているが、夏ごろには赤い果肉のドラゴンフルーツも日本に輸出できるようになる」と、新たな輸出品の売り込みも忘れなかった。