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熊本県あさぎり町で廃校を活用した養蚕業 復興プロジェクト障がい者雇用創出や地域活性化も目指す

飼育場所と桑畑予定地

 近年衰退している養蚕業の復興を目指すプロジェクトが、熊本県あさぎり町で廃校となった元須恵中学校を活用して6月に始動する。プロジェクトの主体は、KAICO株式会社(福岡市)と合同会社ライフアップ(あさぎり町)。6月15日から旧須恵中で蚕の飼育をスタートする。

 KAICOは、「蚕で世界を変えていく。」というミッションを掲げ、蚕でつくる難発現タンパク質を医薬品・診断薬・試薬として世界に届けるために、2018年4月に設立した九州大学発のベンチャー。現在、蚕でつくったタンパク質抗原を用いた経口投与可能なワクチンの実用化を目指し、ヒト用・動物用のワクチン開発を行っている。

 KAICOの経口ワクチン事業は、動物用経口ワクチンからスタート。最初のターゲットとして養豚農家がブタの餌に混ぜることで感染症を予防できる「飼料添加物」を製品化し、ベトナムで販売を開始した。今後ブタ用飼料添加物等の販売拡大により、3年後に年間1500万頭の蚕の調達を目指している。プロジェクトで飼育された繭・さなぎの全量を買い取り、経口ワクチン等の原料として利用していく。

 ライフアップは、熊本県の球磨地域で、高校生までの障がい児の通所支援事業や就労支援を行っている。今回のKAICOとの共同プロジェクトにより、養蚕業復興を通して、障がい者の雇用創出と地域コミュニティー維持・発展等、地域活性化に寄与することを目指している。

 廃校を再活用して養蚕を行うメリットとして、新たな建屋の構築が必要なく資源を有効活用できる。また、細かく区分けされている教室は換気や清掃を行いやすいため、蚕の飼育期間ごとに部屋を分類しやすい。各教室に空調が完備されていることもあり、大きな改修工事を行わなくとも養蚕に適した環境になっている。

 さらに、新たに近郊の荒廃農地に蚕の餌となる桑の木を植樹していくことで放棄地の再活用にもつなげていく。地方創生を絡めた養蚕業復興プロジェクト。養蚕農家、賛同・協力する自治体・企業との連携で進めていくという。