食欲の秋、旬の食べ物はいろいろあるが、その一つがきのこ。中でも今の時期に食べたいのが、生しいたけ。農業総合研究所(和歌山市)はこのほど、生しいたけの収穫と価格の状況についての調査を実施した。この調査は、農業総合研究所が全国のスーパーマーケットで展開している2000店舗以上の「農家の直売所」での販売データを集計したほか、生産者などへのヒアリングを行った。
生しいたけは春と秋が旬とされ、秋は「秋子」と呼ばれ、肉厚で香りが高いのが特徴で、鍋物需要も重なるこの時期は、年間でもっとも消費が伸びる季節という。
同社の販売データによると、直近2025年9月の生しいたけ(菌床栽培)の平均価格は 223円と、同月比で2024年(240円)からは約7%減少、2023年(219円)からは約2%上昇。キャベツ、にんじん、ブロッコリーなどの主要な野菜価格が前年比で10~20%超に急騰する中にあって価格変動が小さいのが魅力といえる。
国内の食用きのこ生産量は2011年を境に減少傾向で、2023年は前年⽐5.1%減の約43.6万トン。生しいたけも同6.5%減の約6万3千トンにとどまった。生産者数も2000年の8.6万戸から2022年には2.3万戸まで減少し、そのうち原木しいたけ農家は1.2万戸にまで縮小している。
しかし、しいたけは近年、単なる煮物やだし用途を超え、ステーキ、バーガー、丼もので「メインディッシュ」として楽しむ新しい食べ方が注目され、消費者の「肉厚・大玉志向」で10~15センチに達する大型の生しいたけが人気だという。特色ある肉厚しいたけを核にした取り組みは全国的に広がり、徳島県神山町の「神山しいたけ」、新潟県南魚沼市の「八色しいたけ」は地域ブランドとして定着。全体の生産量が落ちる中で、人気を保っている。