すぐそこまで来ている“宇宙のリアルな近未来”を知りたいなら BS11開局15周年特番『宇宙のはなしをしよう!』を見逃すな!

(写真右から)田村淳さん、金井宣茂さん、青木英剛さん、黒田有彩さん
(写真右から)田村淳さん、金井宣茂さん、青木英剛さん、黒田有彩さん

 もう、うんざりですよね。新型コロナウィルスにウクライナ戦争、あきれるような事件の数々。そんな時に一歩引いて、いや、400kmほど地球から離れてISS(国際宇宙ステーション)から、何なら38万kmほど離れて月からでもいい。そう、宇宙から地球を眺めたつもりになれば、気持ちはずいぶん穏やかになるはずです。
 ここで「いやいや、宇宙なんて私には関係ない遠い世界の話でしょ」とツッコミを入れたあなたに、ぜひ見ていただきたいテレビ番組があります。3月26日(日)19:00~20:55に放送される、BS11(イレブン)開局15周年特別番組『宇宙のはなしをしよう!』です。
 宇宙といっても、夢やロマンの世界ではありません。相対性理論やダークマターを扱う難しいサイエンス番組でもない。番組独自の未来年表をもとに、近い未来に何が宇宙で実現しようとしているのか、日本がそこにどう関わってくるのかを分かりやすく紹介してくれる、現実的な宇宙情報満載の番組なのです。

月で滞在するための居住施設「ルナグラス」。回転による遠心力で人工重力を発生させることで地球と同じ重力で生活できる(ⒸKajima corporation)
月で滞在するための居住施設「ルナグラス」。回転による遠心力で人工重力を発生させることで地球と同じ重力で生活できる(ⒸKajima corporation)

 まず、注目していただきたいのが、宇宙愛にあふれた4人の出演者です。
 番組MCを務めるのはお笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳(たむら・あつし)さん。実は宇宙への関心も高く、「2023年はスペースバルーンで自作のキャラクターを宇宙に飛ばしたい」と公言しています。3つの会社を経営する経営者という一面もお持ちなので、ビジネス的な視点からもどんどん切り込んでいきます。

MCを務めた「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さん
MCを務めた「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さん

 番組アシスタントとして花を添えるのは、宇宙タレントの黒田有彩(くろだ・ありさ)さん。タレントといっても、お茶の水女子大学理学部物理学科卒の才媛で、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士選抜試験にも本気で挑んだ筋金入りの宇宙好きです。黒田さんのYouTubeチャンネル「ウーチュー部」では、それを存分に確認できます。

アシスタントの黒田有彩さんの宇宙服姿
アシスタントの黒田有彩さんの宇宙服姿

 また、宇宙のことなら何でも答えられる「宇宙エバンジェリスト」として登場するのが青木英剛(あおき・ひでたか)さん。ISSに補給物資を運ぶための無人宇宙船「こうのとり」の開発に従事し、多くの賞を受賞した経歴があり、現在は宇宙やロボティクスなどのスタートアップ企業への投資や支援を行う、宇宙ビジネスのエキスパートです。

「宇宙エバンジェリスト」の青木英剛さん
「宇宙エバンジェリスト」の青木英剛さん

 そして、スペシャルゲストとして登場したのは、JAXA宇宙飛行士の金井宣茂(かない・のりしげ)さん。2017年12月から約6カ月間、宇宙に長期滞在した、現役バリバリの宇宙飛行士です。宇宙飛行士になるためにくぐり抜けてきた厳しい選抜試験や訓練、宇宙空間での体験など、経験者ならではのコメントは、番組にリアルな重みを与えてくれます。

金井宣茂宇宙飛行士(JAXA/NASA)
金井宣茂宇宙飛行士(JAXA/NASA)

 今回の番組で重要な役割を果たすのが、番組独自に製作した宇宙未来年表です。いま、宇宙に関するどんな取り組みが進められ、2050年代までに何が起きて、何が実現するのかを時系列で並べ、年表にしたのです。番組はそれをもとに進行していきます。

独自の宇宙年表をもとに番組を進行
独自の宇宙年表をもとに番組を進行

「2022年 アルテミス計画始動」

 「アルテミス計画」とは、NASAが提案している月面探査プログラムで、約50年ぶりに人類を月面に送ろうというもの。その後、ゲートウェイ(月周回有人拠点)を通じて月に物資を運び、月面拠点を建設、月での持続的な活動をめざすといいます。この計画を推進するため、2022年にアメリカ、日本、カナダ、イタリア、ルクセンブルク、UAE、イギリス、オーストラリアの8カ国が「すべての活動は平和目的のために行われること」などの、アルテミス合意にサインしています。この計画では「初めて女性を月に送る」というミッションのほかに、「アメリカ人以外を月に送る」が裏テーマと青木さんが明かし、2020年代後半には日本人宇宙飛行士も月に降り立つ予定と紹介されました。
 淳さんは、「2020年代後半なんてすぐそこ。ワクワクするなぁ」。
 金井さんは、「ISSからは青い地球が大きく見えましたが、月面からは青い地球がポツンと小さく見えるはず。アポロの宇宙飛行士しか体験したことのない距離感、孤独感がどんなものか興味深い」と話します。
 「もはやNASAやJAXAだけでは月面開拓は難しいので、NASAは『こういう技術を持ってませんか』と民間企業にラブコールを送っている」と語るのは青木さん。
 ISSの宇宙飛行士はイーロン・マスクのスペースX社のロケットを借りて宇宙に行っていると聞いて驚く淳さんは、「日本にも宇宙を目指す企業はあるんですか」と質問。どんな企業が関わっているかは番組を見てのお楽しみです。
 「アルテミス計画で月面に行くのは、人類が太陽系のさまざまな星に探査に行く第一歩にすぎません」と金井さんが言うと、「宇宙プロジェクトが前に進むために僕も何かやりたいなぁ。何をしたらいいですか」と淳さん。青木さんは「エンタメビジネス」と答えます。果たしてその理由は?

月面活動のイメージ(JAXA)
月面活動のイメージ(JAXA)

「2023年 14年ぶりに日本人の宇宙飛行士候補者が誕生」

 2023年2月、JAXAは約1年かけて行ってきた宇宙飛行士候補者の選抜結果を発表。過去最多4,127名の応募者の中から諏訪理(すわ・まこと)さんと米田あゆ(よねだ・あゆ)さんに決定しました。
 金井さんが「14年ぶりにやっと後輩ができました。それまで一番下っ端でした」と場をなごませた後、2人の新たな宇宙飛行士候補者の記者会見の様子がVTRで流されます。
 今回選ばれた2人はすごい経歴ですが、「やはりこういう経歴でないと宇宙飛行士になれないんですか」と聞かれると、金井さんは「いや、そんなことはないと思います。人間力みたいなものが一番重要なんじゃないですかね」と答えます。
 なんと今回の出演者4人中、淳さん以外の3人がJAXAの宇宙飛行士選抜試験を受けた経験があることもわかり、淳さんは「僕も受けたかったんですが、池の水を抜かなきゃならなかったので」と弁解して笑いを取ります。
 話は宇宙飛行士の資質や選抜試験の内容におよび、興味深い話が続いていきます。

「国際宇宙産業展ISIEXに行ってみた!」

 ビジネスや投資を行っている方なら知りたいのは宇宙産業の現状ではないでしょうか。このコーナーでは、東京ビッグサイトで行われた「国際宇宙産業展」を黒田さんがリポート。「出展社の数や種類が、数年前と比べて規模が全然違いました」と感想を述べます。
 青木さんは、「この7~8年で大企業だけでも100社以上が宇宙産業に参入しています。地上で使っている技術を宇宙に持っていったら何ができるのかと考えたら、あらゆる企業が宇宙でビジネスできてしまうんです。宇宙産業の市場規模は現時点で40兆円から65兆円といわれていて、半導体や医療機器産業の市場規模に匹敵する大きな産業です」と解説。
 淳さんは「出遅れたなぁ。いまから何ができるかなぁ~。エンタメに振るしかないなぁ」と思わずつぶやきました。
 宇宙産業はいまどう動いていて、これから2050年にかけてどこまで大きくなっていくのか、ぜひ番組で確認しておきましょう。

「2024年 バルーンで宇宙に家族旅行!?」

 宇宙産業で注目の事業の一つがスペースバルーンです。ロケットではなく大きな気球で高度3万mの成層圏を目指し、ロケットに比べるとコストが安いのが特長です。日本の民間人として初めて宇宙ステーションに滞在した前澤友作さんが支払ったのが1人50億円といわれていますが、スペースバルーンは「いまは2,000万円、将来は100万円まで下げたいという話です」と青木さん。
 「2,000万かぁ~。・・・払えるな(笑)」と淳さん。
 「2,000万円でも払える方は世界中にたくさんいます」「払える人が事業を支援すればいいんですよね」「そうです。そうすれば100万円まで下がってきます」「100万円になった段階では、結構な数の人が宇宙の景色を見ていることになるから、レア度でいうと2,000万円の時に経験できた方が価値がありますよね」といった会話が続きます。
 金井さんは、「宇宙に行くと目が開かれるような気持ちになります。まさに世の中の見方が変わるという体験。どんな方にも宇宙を経験してほしい」と冷静に教えてくれました。

スペースバルーン外観(SPACE NTK(SpacePersPective HPより)
スペースバルーン外観(SPACE NTK(SpacePersPective HPより)
スペースバルーンの内部(SPACE NTK(SpacePersPective HPより)
スペースバルーンの内部(SPACE NTK(SpacePersPective HPより)

 ここで、黒田さんが「スペースバルーンがどんな風に宇宙に上がって行くか体験したくないですか?」と、いたずらっぽく尋ね、番組はVR体験のコーナーへ入っていきます。
 4人はゴーグルをかけて、バルーン宇宙旅行をバーチャル体験。目の前に広がるのは、8K360°カメラを搭載したスペースバルーンを、実際に高度3万mの成層圏に飛ばして撮影した映像です。
 「いま、富士山の高さですよ!」「飛行機の景色と違うね」「ここが成層圏?宇宙の入り口? うわぁ!!!」「上は真っ暗ですね!」「きれい~!」「すげぇ~!」ともう大騒ぎ。その興奮ぶりと驚きの映像は番組でご確認を。実際に宇宙に行かれた金井さんが、どんな感想を語ったのかも気になるところではないでしょうか。

ゴーグルをかけて、バルーン宇宙旅行をバーチャル体験
ゴーグルをかけて、バルーン宇宙旅行をバーチャル体験

実現に向けて動き出している驚きの計画の数々

 番組後半では、さらに壮大なテーマが続きます。映画や漫画に出てきそうなキーワードばかりですが、いずれも実現に向けて動き出しているというから驚きです。
 「2020年代 いよいよ月面に長期滞在!?」では、スペースコロニー構想など月面の長期滞在に向けた取り組みや、それに伴う技術開発が、「2030年代 日本が宇宙エネルギー大国に!?」では、宇宙太陽光発電で日本が資源大国になるという明るい未来が紹介されます。「2040年代 北海道は宇宙版シリコンバレー!?」では、日本の宇宙港をリードする北海道スペースポートが紹介され、北海道が注目される興味深い理由が明らかに。「2050年代 エレベーターで宇宙へ!?」では、エレベーターで宇宙へ行くというSFのような構想の、課題と実現可能性が語られます。

宇宙エレベーターのイメージ(提供:大林組)
宇宙エレベーターのイメージ(提供:大林組)

 番組の収録を終えたばかりの黒田有彩さんに、一番視聴者に見てほしい部分、感じてほしいことをお尋ねしました。
 「宇宙に行くことが現実的になってきているんだよということをまず知っていただきたいですね。民間企業も含めていろんなプレイヤーが大きな目標を持ち、それが現実になっていくリアリティーをこの番組で感じていただけるんではないかと思います。『もう始まってるし、全然夢じゃないよ。あなたはどうする?』と問いかけたいですね。宇宙と絡めて何か自分もできることがあるんじゃないかっていうことを考えてもらう、きっかけになればいいなと思います」
 そう語る黒田さんは、月面で地球を眺めながら湯船につかるプロジェクトを水面下で進めているそうです。
 「月面は過酷な環境で、さらに水が貴重なので、お風呂につかるのはすごく贅沢なことです。でも、月面で長期滞在する時代は必ず来ると思うので、お湯につかってリラックスする時間は月面生活のハイライトになると思うんです。お風呂や水資源、電気やエネルギーなどに詳しい、いろんな方の力を結集したら、もしかしたら実現できるかもしれないと思ってミーティングを重ねています。月面に行けたあかつきにはぜひ実現したいですね」

月に行けたら湯船につかって地球を眺めたいと話す黒田有彩さん
月に行けたら湯船につかって地球を眺めたいと話す黒田有彩さん

 湯船につかるのは日本の良き文化。NASAやアメリカの企業は開発しないでしょうから、ぜひ実現してほしいですね。最後に、黒田さんに視聴者へのメッセージをお願いしました。
 「宇宙って知れば知るほどものすごく大きく、その営みも138億年とものすごく長い。そんな大きな空間と長い時間の中で出会うことは奇跡的なことです。そう思うと、日々当たり前に思っていることが実は奇跡の連続なんだと、宇宙を知ると実感できます。もちろん今日の晩ごはんとか身近なこともすごく大事ですが、たまに宇宙視点を取り入れると、よりいろんなことに感謝できるということを私は宇宙から学びました。この番組はビジネス的にも面白くてタイムリーなんですけれども、多くの方に一回宇宙という視点から物事を見てみてほしいなと思います」

月面生活のイメージ(JAXA
月面生活のイメージ(JAXA)