2023年は日本ASEAN(東南アジア諸国連合)友好協力50周年の記念すべき年だ。国際機関「日本アセアンセンター」(東京)は特設サイトを開設した。同サイトでは記念事業への参加申請を受け付けている。
50周年記念事業は、日本政府とASEANが、日本およびASEAN加盟国で開催される事業を公募し、認定するもので、対象となる事業はさまざまな分野において、日本とASEANとの間の相互理解を深め、友好を促進する事業。
50周年記念事業として認定された事業の主催者は、広報媒体で50周年オフィシャルロゴ・キャッチフレーズが使用可能となり、特設サイトにもイベント情報が掲載される。
同サイトでは、それらの記念事業を紹介するとともに、日本とASEAN諸国の人々をつなぐ架け橋となって活躍している人たちを紹介する「The People of ASEAN-Japan」(毎月更新)や、写真付きのお祝いメッセージを集めたコーナー「Happy ASEAN-Japan 50!」も開設予定で、年間を通して随時更新される。
さらに、同サイトでは、日本とASEANの人々に参加を呼びかけ、一緒に50周年を盛り上げるキャンペーン「Golden Bridge」も開催する。まず、2023年1月から6月にかけては、インスタグラムと連動してフォトキャンペーンを行う。写真のテーマは2カ月ごとに変わり、各テーマの参加者の中から、抽選で記念グッズが進呈される。
2月以降、各国のクリエーターがコラボする記念動画制作キャンペーンも開催予定。詳細は特設サイト(50th Year of ASEAN-Japan Friendship and Cooperation )およびインスタグラムで随時発表される。
ASEANはベトナム戦争を契機に、域内の平和と経済成長を目的として、1967年8月に設立された。当初加盟国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポールの5カ国だった。84年にはブルネイが加盟した。
当初は東西冷戦を背景に反共組織としての性格が強かったが、80年代の経済発展や冷戦終結によって、役割が変容して経済協力に軸足を移していく。95年から99年にかけて、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟し、現在の10カ国体制になった。
日本とASEANは1973年の合成ゴムをめぐる対話以来、50年にわたり、アジア太平洋地域の平和と安定、発展と繁栄のために、緊密な協力関係を築いてきた。
77年には福田赳夫首相がフィリピンを訪問し、その後の対ASEAN外交原則となる「福田ドクトリン」を発表し、「日本は軍事大国にならない」、「ASEANと『心と心の触れあう』関係を構築する」、「日本とASEANは対等なパートナーである」ことが確認された。
日本ASEAN友好協力40周年にあたる2013年には、安倍晋三首相が対ASEAN外交5原則を発表した。自由、民主主義、基本的人権などの普遍的価値の定着および拡大に向けて、ASEAN諸国とともに協力していくことなどが再確認された。
日本とASEAN諸国との経済的な相互依存関係は、深化の一途をたどっている。日本にとってASEANは、中国やアメリカ、EUと並んで、重要な貿易相手。日本初の多数国間協定として日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)が2008年より発効している。
ASEANは約6.5億人の人口を抱え、一人当たりGDPは4540ドル。日本の対ASEAN貿易額はおよそ25兆円、日本の対ASEAN直接投資残高も約25兆円に上っている。
2021年11月、中国の習近平国家主席はASEANとの「包括的戦略パートナーシップ」を宣言した。同12月には、主要7カ国(G7)外相会合にASEANが招待された。
2022年2月に、バイデン米大統領は「インド太平洋戦略」を発表し、日豪などとの同盟強化に加えて、ASEANとの連携強化を打ち出した。
これほどまでにASEANが重視されている理由を、白石隆(しらいし・たかし)熊本県立大学理事長(東南アジア研究)は次のように説明した。「東南アジアがインド太平洋地域の真ん中に位置し、ASEANは東南アジア10カ国の協力機構として、東アジア首脳会議、ASEAN地域フォーラム、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定などで中心的役割を果たしているからである」(2022年3月10日付「毎日新聞」朝刊)。
白石理事長によると、東南アジアの地政学的重要性はこれからも変わらないが、ASEANを構成する国々は地政学的、政治経済的立場の違いから、「漂流」しているという。例えば、近年のASEANと中国との経済的関係の進展を背景に、南シナ海の領有権問題における立場の違い、対中政策で個別の対応にならざるをえない現実を挙げた。
実際、民主主義勢力を弾圧しているミャンマーの軍事政権の後ろ盾として中国の存在があるとされ、中国との関係の濃淡からASEAN加盟国の対応が異なり、ASEANは一枚岩で臨むことができていない。タイやカンボジアにも中国の影が濃い。