子どもたちに日本の主食である米や農業への関心と理解を深めてもらおうと、JAグループは全国の団体や個人を対象に、バケツを使って手軽にお米づくりが体験できる「バケツ稲づくり」事業を令和5年度も実施する。
種まきから収穫・脱穀・炊飯まで誰でも手軽に取り組める「バケツ稲づくりセット」を、全国の教育機関などの団体や個人に無償(送料別)で提供。平成元年の事業開始から昨年度まで、1120万超のセットが配布された。学校では、総合的な学習の時間や社会科の食育教材として、家庭では昔の田園風景を伝える家族だんらんのツールなどとして活用されている。セット内容は、①種もみ・肥料セット(発芽率の高い種もみを選定) ②バケツ稲づくりマニュアル ③お名前シール(児童の名前・栽培開始日を記入してバケツ側面に貼付できる)。
団体(学校・幼稚園・保育園・認定こども園・子ども会などの教育機関・公共施設・公益法人・自治会など)からの申し込みは、1月10日(火)に受け付けスタート。個人からは、3月6日(月)にスタートする。令和5年度は27万セットを用意。配布予定数が無くなり次第、受け付け終了となる。申し込みは、「バケツ稲」で検索し、「バケツ稲づくりセット申し込みフォーム」に必要情報を入力の上、送信。折り返し確認メールが届く。問い合わせは「JAグループ バケツ稲づくり事務局」、電話03-6281-5822(受付時間は10時~17時、土・日・祝日を除く)。
バケツ稲づくりに取り組んだ人たちからの声も届いている。
新潟大学附属長岡小・5年の板垣礼子さんは、バケツ稲づくりの中で「稲の茎に白い輪と産毛のようなものを発見」し、その白い輪=葉耳(ようじ)の役割について研究。筑波大学が主催する朝永振一郎記念「科学の芽」賞において令和4年度に努力賞、令和5年度に最高賞の「科学の芽」賞を受賞した。4年生から5年生にかけて研究を続けた板垣さんは、「来年は、葉耳ができる6月頃に葉耳を水没させて、その成長を観察したいと思います。もっと葉耳のヒミツに近づけるに違いありません。葉耳の役割の解明が、米作りにとって意味のある発見につながれば、とてもうれしいです。研究は難しいこともたくさんありますが、旅行をしているようなわくわくする体験です」とのコメントを寄せている。
山口県の美祢市立大田小学校では、5年生21人で総合的な学習の時間を使い、バケツ稲づくりに取り組んだ。栽培の途中から「天敵」のスズメに穂がどんどん食べられるというハプニングが。ネットを張ったり、ダンボールや袋を使ってカカシを作ったりと、皆であらゆる知恵を絞る中でもスズメの食べ残しの殻が増えていったが、子どもたちは観察を続けた。苦労を経験した後の収穫時には、お米一粒一粒を大切に扱い、丁寧に数え、かみ締めながら皆で味わったという。
岐阜県揖斐川町のJAいび川は、地元の保育園と連携。保育園に定期的に足を運び、園内で年長児11人とカレーの食材となるナス・ニンジン・トマト・ピーマンのプランター栽培やバケツ稲づくりを支援。カレー作り当日は、JAが不足分の米や豚肉を提供し、地場産食材がたっぷり入ったカレーが完成した。参加した園児らは「自分でカレーを作るのは初めてだったけど、最後まで頑張って作った」と話したという。
他にも、「収穫の喜びや生産者への思い、食の大切さを実感できた学びの場になった」などの声が寄せられている。