集団心理がさまざまなできごとを引き起こすのは、日本に限ったことではないが、「みんな同じ」という心理に潜む危険性を考える時、日本人は特に日常のさまざまな具体的場面に則して考えることができそうだ。ハーバード教育大学院で「個性学研究所」を設立した心理学者トッド・ローズ著、『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術』(NHK出版・東京)が発売された。
「集合的幻想」は、事実に見えたことが実際には思い込みだったにもかかわらず、間違った認識に基づいて大勢が行動すること。集団に属する個人の過半数が、ある意見を内心では拒絶しながら、ほかのほとんどの人はそれを許容していると「誤って」推定することで発生する。だが、集団の総意をひとり合点して指針にすれば、誰も望んでいない行動をとることになりかねない。そういう“思い込み”を打ち砕くためにはどうしたらいいか、誤解だと気付いて正しい認識を得るための方法論が詰まった一冊だ。税込み2640円。