どんどん支持が広がっている3人組オルタナティ ブ・ロックバンド「羊文学」を、今年の「フジロックフェスティバル」(7月28~30日、新潟県湯沢町・苗場スキー場)で見ることができました。以前から私もよく聴いてきたバンドですが、約4万人収容のメイン会場「グリーンステージ」が超満員になったライブを浴びて、完全に恋に落ちました。
曲調を言い表すのは難しいのですが「羊文学は羊文学だ」と言うほどの個性があります。かき鳴らされているエレキギターはどこか繊細で、歌声は圧倒的な透明感。でも、芯はしっかりしていて、心に突き刺さる。演奏スキルも高い。はかなさと強さが共存する、唯一無二だと感じるバンドです。
ボーカル&ギターの塩塚モエカさんが10年以上前にバンド活動を開始後、メンバーの脱退と加入を経ていて、2015年にドラムのフクダヒロアさん、17年にベースの河西ゆりかさんが加わり、現在の編成となりました。作詞作曲は塩塚さん。ご自身の声の強みを本当に分かっていらして、最大限に生かす曲作りをされているなと思います。
歌詞は、日常でたくさんの人が感じてはいるけれど、あえて言葉にしていない、名前の付いていない感情のようなものを、美しく鋭く突いてくる。はっとさせられます。何かを否定したり肯定したり押しつけるのではなく、目の前にあることを、うそ偽りなく表現してくれるから、結果的に共感を呼ぶ。聴いている方は間接的に勇気づけられると思うんです。それが、多様性の時代にもぴったり合っているのかなと感じます。
例えば、「光るとき」(テレビアニメ『平家物語』オープニング曲)の歌詞を読んでみてください。足跡は、進めばそのたびに変わっていくものと知っているのに、どうして「永遠」を求めて苦しむの?という問いかけが、咲いて枯れて種になる花の姿と並んで語られます。永遠なんてないと言ってくれて、でもラストには、だとしたら今の暗闇もきっといつか明けて終わるでしょう、と添える。かすかに希望が立ちのぼるようです。
塩塚さんは学年でいうと私と同じなのですが、この年でそんな歌詞が書けるとは・・・。「文学的なことを書こうとはしてないです」とインタビューなどで話していますが、普通にできてしまっていることに驚きます。
3人は今年、台湾で初の海外単独ライブも開きました。1200席のチケットが発売数分で売り切れたそうです。羊文学、どこまで広がっていくのか楽しみです。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.36より転載】
山崎あみ(やまざき・あみ)/1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSIClock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時~8時55分)メインDJ。ポッドキャスト番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。金土曜更新。共同通信社制作)出演中。