岐阜県養老町は、歩数や脈拍をウエアラブル端末で測定してスマホのアプリ「YORO健康通帳」に記録、健康状態を見える化するとともに、歩数などの目標を達成すると得られるポイントを地域通貨に交換できるシステムの運用を、2024年3月から始めた。3月2日に開かれた3回の説明会には、30代から80代の町民計36人が参加。アプリをインストールしたあと、体組成を測定、保健師の問診を受けてそれぞれの目標を設定した。先着100人の町民をモニターに12月まで実施する。
▽生活習慣改善の指導も
養老町は、地域通貨アプリ「養老Pay」と、町内を通る養老鉄道、オンデマンドバスを連携させ、クーポンや商品券を発行、町民のウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態であること)を向上させるとともに関連人口の増加を目指す「Smart Town YORO Project」事業に取り組んでいる。
健康通帳はその一環で、ヘルスケア企業シミックソリューションズ(東京都港区)の健康情報管理アプリ「my melmo(マイメルモ)」をカスタマイズした。町が貸し出す腕時計型の端末「Fitbit(フィットビット)」を着用し、歩数や歩行時間、血中酸素濃度、睡眠時間などを測定。データはスマホの健康通帳に記録され、日々の健康状態が自分で確認できる。医師、保健師、医療機関スタッフなどとデータを共有して、生活習慣改善のアドバイスも受けられる。
歩数と歩行時間の目標は、町民それぞれが医師または保健師と相談して設定。目標を達成すれば1日30ポイント、アプリのストレスチェックに記入すれば1日10ポイントがたまり、10ポイントで養老Pay1円分に交換できる仕組みだ。
▽気付きのきっかけに
人口2万6千人余り、農業と観光を主要産業とする養老町が独自の健康管理アプリを導入した背景には、高齢化が進んでいることに加え、町民の健康状態が芳しくないという事情があった。「住民1人に車1台」(同町産業観光課)という車依存地域であり、町民の1日の平均歩数は男性が全国平均より約4割少ない4083歩、女性は約3割少ない4204歩止まりだった(データは2017年)。町はウオーキング大会や健康イベントなどの啓発活動を続けているが「肥満や運動不足、生活習慣病の人が多い」(養老町の保健師)という。
養老町産業観光課の竹中修参事は、健康通帳の導入について「自分の健康状態や、健康のための活動によって幸福度が高まるという気付きのきっかけにしてほしい。最終的に高騰する医療費の適正化につながれば」と効果に期待を寄せている。
説明会に参加した町民の50代男性は「アプリで歩数が見られる上、地域通貨に交換できるのがありがたい。体重をもっと落としたいので、歩数の目標は1日5000歩にした。できるだけ頑張りたい」と話していた。