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抗がん剤開発などにギャップファンドを提供 日本総研、ディープテック分野でスタートアップ支援

中間発表会であいさつする中間ピッチ優秀賞の受賞チーム代表者=9月30日、東京都内

 日本総合研究所はこのほど、東京都内で革新的な技術研究をしているディープテック分野のスタートアップ(新興企業)などを支援する「Tokyo Technology Commercialization Program」(TokyoTCP)で選考した、「新しい抗がん剤開発」「燃費効率が高い船舶用プロペラの商用化」などに取り組む企業や大学などの10チームに対し、事業化を促進するギャップファンドの資金を提供した。

 TokyoTCPは、東京都が多様な主体によるスタートアップ支援策を後押しする「TOKYO SUTEAM」事業の一つとして協定事業者の日本総研が実施しているアクセラレーションプログラムで、9月30日に「中間発表会・ギャップファンド審査会」を都内で開いた。7月に書面審査を通過した創業前・創業直後の18チームが参加し、それぞれが最先端の技術シーズについて短時間の提案(ピッチ)を行った。審査の結果、「GAPファンド審査員特別賞」を受賞した2チームに各100万円、「GAPファンド賞」を受賞した8チームに各200万円が提供された。

 さらにGAPファンド賞受賞者のうち、以下の3チーム(所属チーム名・代表者名・ピッチタイトル)が「中間ピッチ優秀賞」に選出された。▽Troidal Propulsion・中村ユセフ健氏・特殊形状プロペラの力で世界の船舶業界に革命を起こす▽株式会社Ferropt Cure・大槻雄士氏・がんで苦しまない世界を 「フェロトーシス誘導性抗がん剤」▽東京農工大学・寺正行氏・遺伝子の「カタチ(G4構造)」を狙う低分子創薬の基盤技術事業

 中間発表会には約10のベンチャーキャピタル(VC)や政府系機関を招待した。このうちVC1社から1チームに出資検討の打診があり、政府系機関の資金提供も検討されている。

 TokyoTCPでは、このほか外部資金の獲得支援、経験豊富な経営者やベンチャーキャピタリストらによる経営メンタリングを実施。また7月の書面審査を通過した18チームの事業プランについて、その後の事業実施状況などを加味した「最終審査会」を2025年3月7日に開催。中間審査分とは別に、あらためてギャップファンドの提供を決める。今のところ、追加件数や額は未定。

 日本総研はTokyoTCPの目的について「東京には約140校の大学があり、最先端の技術シーズや特許を数多く抱えるが、諸外国と比べ、特許出願数に対するスタートアップの設立数が少なく、せっかくのポテンシャルを生かし切れていない。研究者がスタートアップへ参画する機会が不十分で、ディープテックを事業化する場合の資金繰りも必要になる。また本来、中核となる技術は社会で広く使われ、市場形成までの検討が必要だが、研究者が経営者の役割を同時に担えば、負担が重くなる。こうした諸課題に対し、研究者が求める支援を提供していきたい」としている。