コロナ禍を機にテレワークの普及が進む中、オンオフの切り替えの難しさや集中力の低下といった課題も浮き彫りになってきている。そのような中、筑波大学(茨城県つくば市)体育系の水上勝義教授と日本アロマ環境協会(東京)が共同で、アロマテラピーの一手法で、精油(エッセンシャルオイル)の香りを空間に拡散して楽しむ「芳香浴」とテレワーク中の気分やパフォーマンスの関係を探る研究を行った。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、2020年4月の緊急事態宣言をきっかけにテレワークの実施率が急増。それ以前の1割未満から、都内企業では2023年7月時点で、45.2%に達した。テレワークにはワークライフバランス向上などの利点がある一方、コミュニケーション不足や孤独感の増大、運動不足による心身の健康問題が指摘されている。出社回帰が進む企業もある一方、テレワーク中心の働き方も増える中、就業者の心身の健康と仕事の生産性向上は重要な課題となっている。
今回の研究では、週3日以上のテレワーク勤務を1年以上継続していて、精油を日常的に活用していない健常な25~49歳の男女30人を対象に実施。エッセンシャルオイルの香りを用いた芳香浴を4週間実施し、心理・睡眠・認知機能・パフォーマンスへの影響を明らかにすることを試みた。その結果、開始10分後に、二次元気分尺度の活性度・安定度・快適度の値が有意に上昇。また、芳香浴を4週間実施した結果、プレゼンティーイズム(健康問題が理由で生産性が低下している状態)が有意に低下し、テレワーク就業者の気分改善や仕事のパフォーマンス向上に有用である可能性が示されたという。
水上教授と同協会は、「今回の研究により、精油の芳香浴がテレワーク就業者の気分改善と仕事のパフォーマンス向上に寄与する可能性が初めて示された。テレワークが定着化しつつある中で、就業者に対する有効なセルフケア法の一つとして、(労働者の健康管理や職場環境の改善などを指す)産業衛生の観点からも大きな意義を持つと考えられる」としている。