
金利の上昇にともない、預金にも少しまとまった利息が付くようになってきた。この利息にかかるのが利子課税である。税率は国税で15%、地方税(住民税利子割)が5%である。
住民税は「地域社会の会費」的な性格を持つ税であり、通常は居住する住所地の自治体に納めるものだ。だが「利子割」は、金融機関の口座のある営業所等所在地の都道府県に納付される。いわば住所地課税の例外であり、税収の帰属が金融機関の立地に左右される仕組みとなっている。これまで預金は預金者の住所地に近い金融機関に預けられることが多く、そのずれは都道府県単位でみれば、それほど大きくないと考えられてきた。
しかし、近年のインターネットバンキングの普及で、この前提は大きく揺らいでいる。実店舗を持たない「ネット銀行」や「ネット支店」が全国から預金を集める中で、その拠点は東京に集中している。その場合、地方に住む人が預けたお金であっても、利子課税は本店所在地に納付されるため、結果として税収は東京都に集中するのだ。
東京都の人口は全国の約11.1%(令和2年国勢調査)であるのに対し、個人住民税利子割は税収全体の41.0%(令和6年度)を東京都が占めている。個人住民税所得割、配当割、株式等譲渡所得割の東京都シェアがいずれも20%程度であることと比較しても、その割合は高い。
地域で働き、地域で暮らす人々の資金が、金融の仕組みを通じて流出し、その過程で税収もまた東京に帰着していく。住民税は本来、生活や経済活動の基盤を支える地域に還元されるべきものであるが、その帰属は必ずしも地域の実態と一致していない。
これに対し、令和8年度税制改正で、新たな制度が導入されることとなった。金融機関が口座所在地の都道府県に税を納める従来の仕組みは維持しつつ、都道府県間で個人にかかる所得金額を基準に税収帰属を調整する仕組みが導入される。本来であれば、口座名義人の住所地の都道府県に個人住民税利子割を帰属させることが望ましいが、口座と住所地が必ずしも正確に紐づけられていない現状では、金融機関側の事務負担などが大きく、実現は容易ではないという。
ただ、こうした見直しが行われても、東京一極集中による税源偏在の課題はなお残る。大法人の本社機能の集積や支店の統廃合など企業行動の変化は、法人住民税・法人事業税の偏在を強めている。さらに、再開発や投資の集中に伴う地価上昇は、固定資産税収の面でも東京都への集中をもたらしている。その結果として財政力格差による行政サービス水準の差が拡大しているとすれば、それをどこまで見直すのか。税源配分のあり方について、さらなる議論が求められている。
(東洋大学教授 沼尾波子)
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.19からの転載】









