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豪の穀物、米関税の直接影響受けず=分析  NNAオーストラリア

米国向け豪農産物輸出

 トランプ米大統領が先ごろ米国が輸入する農産物に関税を課す方針を示し、国際市場に波紋が広がる中、市場情報会社メカルドは、オーストラリアの穀物市場への直接的な影響はほとんどないと分析した。

 オーストラリア統計局によると、2023/24年度に米国向けに輸出された農産物の総額は71億豪ドル(1豪ドル=約93円)に達したが、その大半を占めたのは牛肉や羊肉、動物性油脂などの畜産関連品だ。これらの品目が輸出額全体の72%を占め、穀物の割合は極めて小さい。実際にオーストラリアから米国への小麦輸出は過去5年間行われておらず、昨年7月から12月にかけての大麦輸出額もわずか1万5840豪ドルにとどまる。カノーラ関連品の米国向け輸出額は2560万豪ドルと一定の規模があるものの、オーストラリア全体のカノーラ品総輸出額50億豪ドルの中ではごく一部にすぎない状況だ。

 こうしたことからメカルドは、関税が導入されてもオーストラリアの穀物業界に対する直接的な影響は限定的と指摘。一方で、関税問題が市場心理に与える影響は無視できないとした。特にカノーラ価格は関税の懸念を背景に過去数カ月にわたり乱高下しており、国際市場の不安定さがオーストラリア市場にも波及する可能性があるという。小麦市場も先週、米国への報復関税の可能性が示唆されたことで価格が急落し、市場の動揺を招いたと指摘した。

■小麦価格は支持される


 その半面、オーストラリアの穀物価格は国際市場の影響を受けるものの、完全に連動しているわけではないという。また報復措置により米国産小麦に高関税が課せられた場合、米国から小麦を輸入していた市場にとっては米国産小麦の価格上昇につながり、関税負担のないオーストラリアの小麦を選択することが予想され、価格は支持されると予想した。

 メカルドは、今回の関税施策は市場のボラティリティーを高める要因にはなっているが、オーストラリアの穀物市場にとって決定的な打撃を与えるものではないとした。一方で関税によってオーストラリアの穀物価格が国際市場との連動性を失うことが懸念されるとし、先物市場の大きな値動きでリスクが高まる可能性があるとしている。

(オセアニア農業専門誌ウェルス(Wealth) 3月14日号掲載)

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