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何本植えるか、最初の選択が肝心  赤堀楠雄 林材ライター 連載「グリーン&ブルー」

 林業の作業カレンダーで言うと、春は植林の季節だ。最近は秋に植えるケースも増えているが、各地で植樹祭が開催されるのはこの季節が圧倒的に多い。日本林業の代表的な造林樹種であるスギとヒノキは、1ヘクタールに3千本の苗木を植えるのが一般的だ。1ヘクタールを尺貫法に換算すると3千坪だ。つまり、1坪に1本の苗木を植えるわけで、これを「坪植え」と呼ぶ。1坪は1間(約1・8メートル)四方だから、畳2枚分のスペースに1本植えるのだとイメージすればいい。

 だが、これはあくまでも一般的な手法で、質の高い木を育てる場合は植え付け本数を増やす。たくさん植えて質の劣ったものを間伐で少しずつ間引きし、粒よりの木だけに育て上げるわけだ。本数を増やして密度が高い状態で管理することによって肥大(太ること)成長を抑え、年輪の詰まった木に仕立てる狙いもある。多少混んでいた方がまっすぐに育てやすいとも言われる。

 このように植え付け本数を多くすることを「密植」と呼ぶ。奈良県の吉野や三重県の尾鷲といった優良材の産地では、1ヘクタールに8千〜1万本も植え付ける超密植の手法が採られてきた。それら以外でも、少しでも良い木を育てようと4500本や5千本、あるいは6千本と密植を採用するケースは各地で見られた。

 ところが、昨今は林業経営のコストダウンを図るために植え付け本数を減らすこと(「疎植」と呼ぶ)が政策的に推奨されている。植林に対する補助金は、上限が1ヘクタール当たり3千本だが(それを上回る本数は自費で植えることになる)、2027年度からは2千本に減らされる。

 本数が減れば苗木代が節約され、間伐の手間も減る。最近の家は木が壁の中に隠れる工法が多く、優良材のマーケットは縮小している。木材価格が以前より値下がりしている中では、コストをなるべく下げるのが得策というわけだ。実際、政策に沿って植え付け本数を2千本に減らすケースが最近は多い。

 それでも、やはり良い木を育てたいからと、西日本のある林家(森林所有者)では今でも6千本植えている。別の林家も、少なくともこれまでの3千本は維持すると力を込める。彼らは疎植ではまともな木が育たないだろうと口を尖らせる。

 疎植か、密植か、あるいは従来の3千本がいいのか。結果がわかるのはずっと先であり、やり直しは利かない。植林は未来への責任を担う行為だ。そのことを忘れないようにしたい。

赤堀楠雄(あかほり・くすお)林材ライター。1963年生まれ、長野県在住。林材新聞社(東京)勤務を経て99年に独立。森林・林業・木材・木造住宅などに関する取材、執筆を行う。著書に「林ヲ営ム〜木の価値を高める技術と経営〜」(農文協)など。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.16からの転載】