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【キウイ物語(中)現在】ユニークな組織形態 人間の手と科学が支える「ゼスプリ・システム」 品種改良が使命

選果場で箱詰めされるキウイ

 ゼスプリという企業を理解するには、一般的な食品の製造・販売会社と異なる、その独特な組織形態を見逃すことはできない。

 株式会社という体裁を取ってはいるものの、実態としては生産者共同組織的な性格も併せ持っている。キウイ生産者であるグローワーはゼスプリの株主でもある。つまり、ゼスプリはグローワーの集合体。これがゼスプリのユニークな基本構造だ。

 この組織と事業を支える背骨となっているのが「ゼスプリ・システム」と呼ばれる徹底した管理態勢だ。

 「果樹園」から「栽培」「貯蔵」などの段階を経て「店頭」に並ぶまで、それぞれの段階で一貫した厳しい基準を設けている。消費者がいつどこで買っても、どれを選んでもおいしいと感じてもらうためには、このプロセスのどの一カ所でも妥協は許されない。そして、このシステムを支えるのは「人間と科学」の融合だ。驚くほどシビアで、かつ情熱に満ちている管理の現場を訪れ、ゼスプリの品質を支える科学の力を探った。

▽ゼスプリのラベルは「信頼の証」 

 各地の果樹園で収穫されたキウイは、選果場(パックハウス)に運ばれ、品質検査を経て品種・サイズごとに箱詰めされる。今回訪れたタウランガにあるパックハウスは、NZ国内最高峰の品質管理施設といわれる。

 ヘアネットを着用した作業員が、一個一個のキウイを自らの目と手で選別するほか、AI、赤外線カメラやセンサーも常時スキャンを続ける。糖度、大きさ、形状、表面のわずかな傷。それらが秒速で仕分けられ、完璧な状態で各国へ送られる。検査するためにキウイを箱から出す「箱出し」と呼ばれる作業は1日20時間、週6日稼働しているという。GMのトーマス・ワッツさんは「今年のカメラチェックでは70%がクリアし、高水準だった」と結果に満足げ。徹底した衛生管理の下、足を踏み入れた内部は人間と科学の力が高度に融合した空間だった。

 キウイが詰まった箱には生産者や種類、サイズなどが記載されたバーコードが張られており、箱単位での履歴の追跡が可能だ。日本を含めた輸出用には「クラス1」という最高級の品質のキウイが選別される一方、NZ国内では1ランク下の「クラス2」が流通しているという。通訳ガイドのシーナ・ギブソンさんは「NZではクラス1は食べられない」と言って笑う。「ゼスプリのラベルが貼ってあれば安心」という信頼感は、この圧倒的なテクノロジーに裏打ちされている。

コンベヤーで運ばれるキウイ
工場内で箱詰めされたキウイが次々と運ばれる

 

▽20年の歳月が生んだ「奇跡の結晶」

 品質を守る一方で、未来のキウイを創造する中枢が、タウランガ近郊のテプケ(Te Puke)にある「キウイフルーツ・ブリーディング・センター」だ。ゼスプリと国営の研究機関が共同出資して2021年に設立されたこのセンターは、100ヘクタール(ha)という広大な研究農場を持ち、遺伝学など最先端の技術を駆使して品種改良などに力を注いでいる。

 現在、日本の市場でも人気が急上昇している「ルビーレッドキウイ」も、ここで20年以上の歳月をかけて生み出された。ルビーレッドは突然変異や遺伝子組み換えではない。敷地に毎年3万~4万本の苗木を植え、交配を何千回、何万回と繰り返すという気の遠くなるような作業の積み重ねから生まれた「奇跡の結晶」だ。

  特徴的な赤い色はアントシアニン。抗酸化作用が期待されるこの成分を含み、ベリーのような甘みを持つこの品種は、従来の「キウイは酸っぱい」という概念を覆すのに成功し、キウイという果実のポテンシャルを一段引き上げる存在となった。

20年の歳月をかけて誕生したルビーレッドキウイ

 

▽「第4」「第5」のキウイ目指す

 センターは、その使命を「新規の品種ソリューションを提供することで、消費者、生産者、そして世界のサプライチェーンに変化をもたらすこと」と宣言する。

 その研究の一例として、茶色の外皮を異なる色にできないか、手で外皮をむけないか、食べ頃の期間を延ばせないか、販売期間を変えられないか…などのアイデアが出されていく。

 驚いたのは、キウイのマーケットシェアは、リンゴやバナナ、かんきつ類に比べて低く、1%以下しかないという事実だ。センターでは「例えば、もし、キウイを食べる際にナイフで切るのではなく、手でむけるようになったらマーケットシェアは上がるのではないか」といった消費者の利便性に直結する改良が検討されている。バナナのように手軽に食べられるキウイが実現すれば、キウイの売り上げ拡大につながる可能性もあるとにらむ。

 とはいえ、品種改良はたやすいことではない。センターで約40年研究を続けているアラン・シール博士は「これまで20~25年研究してきた品種があって、もしかしたら結果が出るかもしれないが、これ以上は公表できません」と笑ってかわした。

 センターは、ゼスプリが経営戦略の目標としている2035年をめどに、「第4」「第5」となる新しいキウイの開発を目指すという。

品種改良について説明するアラン・シール博士(左)

 

▽ゼスプリの求める基準に達しているか

 タウランガにあるヒル研究所(Hill Laboratories)は、40年以上前からキウイの品質管理に目を光らせている。

 さまざまな果樹園から送られてきたすべてのキウイの重さ、形、色、糖度、熟成度合いなどをあらゆる角度から検査する。1日に届けられるのは250~300袋。シーズンを通すと約2万袋のキウイが届けられ、検査されるという。すべての検査は1日で終わり、翌日にはゼスプリに検査結果が送られるという早さ。このラボでブランチマネジャーを務めるブラッド・スティーブンスさんは「すべてゼスプリの求める基準に達しているかどうかのために調べています」と、このスピード感を強調する。

キウイを検査するラボのブラッド・スティーブンスさん

 

▽キウイは「健康インフラ」

 キウイは単なる「農産物」ではなく、生産者の情熱と、科学的な探究心、そして消費者の健康を願う思いが詰まった「デザインされた果実」といえる。

 火山国NZの火山灰を含んだ水はけのいい土壌は、キウイ栽培の大きなアドバンテージ。青い空の下、今日もキウイは豊かな太陽の光を浴びている。それは、私たちの明日を明るく、健康にするための光だ。

 消費者にとっても、キウイは「デザート」というだけではなく、「健康インフラ」としての役割を担っているともいえるだろう。ゼスプリが提唱する「栄養改革」は、エビデンスにのっとった緻密な戦略に基づいている。

 次回はゼスプリ本社が舞台。経営戦略や栄養素に関する最新の研究結果に迫り、ゼスプリとキウイの「未来」を探る。

キウイフルーツ・ブリーディング・センター

 

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