今、ハンブルクにいます。日本から雅楽演奏家13人が渡欧し、ウィーンとハンブルクでコンサートやワークショップを行うプロジェクトで、今日がその最終日。ハンブルクの中心部に広がる巨大な公園の中にある日本庭園で雅楽の演奏と舞を披露し、ビールをしこたま飲んで現在午前2時半。こちらは22時ごろまで空が明るいので、気が付いたら深夜になっています。
ヨーロッパの人に雅楽がどう受け止められるのか、正直不安でした。日本の中ですらあまり有名でない伝統音楽。歴史があまりにも古いので、現代人には理解しにくい面がいろいろとあります。テンポは遅いし、リズムも一定でない。国内で演奏会をやってもお客さんの3割くらいは寝てしまいます(ちなみに雅楽奏者の中では「寝られる雅楽は良い雅楽」と言われていて、寝てしまったお客さんが多ければ多いほど「良い演奏だったね!」と褒め合うことも)。
蓋を開けてみれば、お客さんは集中してじっくりと聞いてくれ、ワークショップでは子どもたちから質問が飛び交い、コロンビア人作曲家のフリアン・フェレイラが今回のために書き下ろした新作雅楽「アネモイア」にはスタンディングオベーションも。大きな会場を埋め尽くした観客から歓声が上がりました。
一番驚いたのは、雅楽の歌をお客さんと一緒に歌ったときのこと。日本人でも読めない難解な楽譜を、ウィーンのお客さんたちは一目見ただけでとても美しく歌ってくれました。なんでそんなに歌えるんですかと聞くと、「グレゴリオ聖歌の楽譜に似ているね」とのこと。みなさん声が綺麗で、歌うことに慣れているのだなと感じました。
学校のワークショップでは記念撮影後にその場で急に子どもたちの歌が始まり、さらに輪唱まで。レストランに行けばあるテーブルから美しいハーモニーの合唱が始まり、歌が終わると自然に拍手が起きていました。ウィーンの人に聞くと「よくあることだよ」とこともなげに話します。お酒を飲んだら歌う歌、みんなで火を囲むときに歌う歌など、日常に歌が溶け込んでいるそうです。
古い歌が普通の人々の生活の中に生きている姿がとても美しく、羨ましくも思いました。と同時に、千年以上の歴史を持ち「世界最古のオーケストラ」とも言われる雅楽を生きた音楽として伝えていくことの重要さも感じます。形を持たない音楽が人から人へと受け継がれていくことの尊さを、改めて実感した旅でした。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.25からの転載】
カニササレアヤコ(かにさされ・あやこ)お笑い芸人・ロボットエンジニア。1994年神奈川県出身。早稲田大学文化構想学部卒業。人型ロボット「Pepper(ペッパー)」のアプリ開発などに携わる一方で、日本の伝統音楽「雅楽」を演奏し雅楽器の笙(しょう)を使ったネタで芸人として活動している。「R-1ぐらんぷり2018」決勝、「笑点特大号」などの番組に出演。2026年東京藝術大学邦楽科を卒業。







