おでかけ

「えち鉄×福鉄 名物広報トークバトル」が銀座で勃発? 北陸新幹線の福井延伸開業がますます楽しみに! 

 2024年春、北陸新幹線は金沢から福井~敦賀まで延伸開業する。福井県へのアクセスが容易になり、福井を訪れてみたいという人も増えそうだ。さまざまな魅力を持つ福井県だが、実は鉄道もその一つ。なかでも、福井市とその周辺の市町村を走るローカル線は面白い。というわけで8月28日、福井市北陸新幹線開業200日前イベント「福いいネ! えち鉄×福鉄 名物広報トークバトル」(主催・福井市)が都内で開かれた。会場となったのは、福井の料理・お酒を提供する会席料理の店「福井乃喜心 鯖街道」(東京・銀座)。SNSなどで発信する鉄道系インフルエンサー約20人が集結した。

右から福井鉄道の白崎正臣さん、えちぜん鉄道の吉田周平さん、司会の蜂谷あす美さん。
左から司会の蜂谷あす美さん、えちぜん鉄道の吉田周平さん、福井鉄道の白崎正臣さん

 福井県のローカル線といえば、えちぜん鉄道と福井鉄道。この日は両社の名物広報、吉田周平さん(えちぜん鉄道株式会社営業開発部営業開発グループ)と、白崎正臣さん(福井鉄道株式会社鉄道事業本部鉄道営業部)が銀座で対峙(たいじ)。熱い思いをぶつけあうという。行司役ならぬ司会は、蜂谷あす美さん(鉄道関連の文筆家、福井市出身)が務めた。

 ——まずは両社のプロフィールを紹介していただけますか。

吉田「えちぜん鉄道の設立は2002年で、いわゆる第3セクター。二つの路線があって、勝山永平寺線は福井駅を起点に東の山のほうに入っていきます。曹洞宗大本山の永平寺、恐竜博物館のある勝山などの観光地があります。三国芦原(みくにあわら)線は、あわら温泉、東尋坊があり、越前ガニで有名な日本海のほうまで伸びています。令和4年度の利用者数が約339万人でした」

白崎「福井鉄道は、明治45年創業、今年で111年の歴史があります。これといった観光地がないのが特徴で、福井市、鯖江市、越前市を結ぶ生活路線です。鯖江市は世界に誇る眼鏡の生産地、越前市は来年の大河ドラマの主人公紫式部が訪れたこともある歴史ある街。福井市は福井の県庁所在地。主に通勤・通学に使われ、年間約200万人の利用者がいます」

えちぜん鉄道の路線図と主な観光地(左)、福井鉄道の主な歴史と福武線路線図
えちぜん鉄道の路線図と主な観光地(左)、福井鉄道の主な歴史と福武線路線図

 
——自社の鉄道や車両のPRをお願いします。

吉田「えちぜん鉄道の現行車両は、5000形、6000形、7000形、8000形(恐竜列車)、L形(キーボ)。8000形はごく最近1カ月ほど前に加わりました。

 5000形は最も古く1両しかありません。ロングシートタイプでイベントに使ったりもします。貸し切り料金は区間料金×席数とリーズナブル。1区間だと160円×50席分の金額で貸し切りにできます。いろんなイベントのご相談にものります。

 6000形は23両すべて愛知環状鉄道さんから譲ってもらいました。幅が5000形に比べて8cmほど広くてホームにぶつかるので、導入時にすべての駅のホームを削りました。マニアックな話ですが、同時に車両の4隅をカットしています。アテンダントという女性乗務員が乗車していて、切符販売や観光案内など乗客に対応しています。

 7000形はJR東海さんからいただいた12両。長野の飯田線に使われていたので雪にも強いだろうと採用しました。

 8000形は静岡鉄道さんからいただいた2両1編成。観光列車『恐竜列車』として内装も外装も思いっきり改造させていただきました。1両目の外装にはアメリカ大陸にいた恐竜たちが、2両目にはアジアで生息していた恐竜たちが描かれています。これに乗って恐竜博物館に行っていただけると楽しさ倍増だと思います。1両目がジュラシックゾーンで中にティラノサウルスやトリケラトプスが。2両目は化石発掘ゾーンです。乗っていただいた方には恐竜のカードやフィギュアをプレゼントします。夏休み中は毎日、9月以降は土日祝日運行で1日1便。おかげさまで大人気で、11月の下旬まで予約でいっぱいです。

 路面電車のキーボは、福井鉄道さんの路面電車がフクラムなので「希望ふくらむ」のごろ合わせでキーボと命名しました」

左からえちぜん鉄道 7000形、8000形
左からえちぜん鉄道 7000形、8000形
左から福井鉄道のフクラム、えちぜん鉄道のキーボ
左から福井鉄道のフクラム、えちぜん鉄道のキーボ

白崎「福井鉄道には3つの大きな特徴があります。一つ目は路面電車と鉄道路線(約7割)が一体になっていることです。フクラム(F1000形)という路面電車タイプの車両が鉄道路線に乗り入れている。路面電車は時速40kmですが、鉄道路線に入ると時速65kmで飛ばします。ネットでは『爆走する路面電車』として有名です。

 もう一つの特徴はJRと思いきり並行して走っていること。さらに統一感のない車両も福鉄の特徴ですね。形もばらばら、色もばらばら。大正、昭和、平成、令和それぞれの時代に作られた車両が混在しています。今年フクラムライナー(F2000形)という新型車両も導入しました。福井鉄道で一番人気があるのが今年100歳を迎える大正時代の木造車両『デキ11』です。冬季の除雪車として現役で動いています。

 地方鉄道なのにオリジナル車両があるのも福井鉄道ならでは。令和生まれのフクラムライナーは純国産のオリジナル車両で1回も故障がありません。実はフクラムのほうはドイツ製なのでメンテナンスが大変なんです。また、ドイツの路面電車『レトラム』もイベント車両として季節運行していて人気があります」

左から福井鉄道 F10形(レトラム)、F1000形(フクラム)
左から福井鉄道 F10形(レトラム)、F1000形(フクラム)

 ——外から見ていると福井鉄道さんは自由な感じで、えちぜん鉄道さんは上品にまとまっているイメージ。お互いどう思っていますか?

吉田「社風はぜんぜん違います。えちぜん鉄道は社風を自分たちで堅めにしているかも。福鉄さんほど攻めたことはできない。個人的には白崎さんに出会ってからいろいろ相談するようになったかな」

白崎「えちぜん鉄道さんは上品できれいなイメージ。うちはお笑い系で社風が自由なので何でもありな感じ。でもPRが下手なので吉田さんに頼っています。実は現場も仲がいい」

吉田「えちぜん鉄道の若い男性運転士と福井鉄道の若い女性運転士が結婚したこともありますよね。

 私は転職組で、鉄道への興味は人並み。むしろ鉄道で働いている人が好きです。不器用だけどものすごく熱い。福井は雪がものすごく降るので、いろんな職種の人が一所懸命、困難に対処する。絶対に電車を走らせるという使命感がすごい」

白崎「福鉄も、雪でJRが止まってもうちは走らせるぞというプライドを持ってやってますね。運転士をしていた時は、大雪で路面電車の前に車が立ち往生していた時に車を押してあげたことも何度もあります」

 お話をうかがっていると、トークバトルというより同じ方向に向かって並走する仲間の会話のよう。来場者も福井の料理や地酒を楽しみながら笑顔でお二人の話に耳を傾けうれしそうだ。トークイベント終了後は会場がディープでマニアックな鉄道の話題で盛り上がっていた。北陸新幹線延伸に向けては、両社ともさらなるプロジェクトやパワーアップした計画が進んでいるとか。来春には、ローカル線に乗るためだけでも福井に行ってみたい、そう思わせるような夜だった。