物価上昇が止まらない。10月1日以降も、たくさんの製品が値上がりし、家計を圧迫している。そうした中、帝国データバンク(東京)は、昨今の食品値上げが家計に与える影響と今後の見通しについて調査・分析を行った。
3万品目を超える過去最大級の値上げラッシュとなっているが、足元では相次ぐ値上げに家計が追い付かない「値上げ疲れ」の兆候がある。帝国データバンクは9月29日までにまとめた、国内の主要な食品や飲料メーカー195社が4月以降に値上げした食品約2万2000品目の値上げデータと、総務省「家計調査」における二人以上世帯の消費支出データを基に、生鮮食品を除く食品値上げによる家計支出額の影響について試算した。
その結果、2023年度上半期における1世帯あたり家計への食費負担額は、節約など値上げへの対策をしない場合、前年の22年度月平均から1カ月当たり最大で1割増の4058円、年間で約4万8000円増加。他方、実際の支出データでは、7月までの平均で月373円・約1%の増加にとどまった。本来見込まれた増加額に比べ、約3700円分の食費支出が家計で「節約」により圧縮された可能性があるという。
節約された家計負担額を食品分野別にみると、最も金額が大きいのは「加工食品」で、想定された増加額より月1293円の節約試算に。冷凍食品や水産練り製品、即席めん製品などで節約の傾向が目立つ。「菓子」は月782円、「酒類・飲料」は月697円それぞれ節約される試算となった。
一方、食パンや菓子パンなどの「パン製品」では190円の節約にとどまったほか、「食用油」は80円、小麦粉などの「原材料」は26円、それぞれ当初試算より節約され、他の食品分野よりも圧縮幅が小さかった。調理に不可欠な食品類では総じて値上げの受け入れを迫られた可能性がある。
原材料価格の一服感に加え、コスト増分の価格転嫁が進んでいることも背景に値上げの機運は鈍化傾向が鮮明化。一部PB(プライベートブランド)商品などは値下がりするものもあり、10月以降の家計負担に対する影響は4月に比べて抑制されると同社では分析している。