はばたけラボ

子どもでも株式の仕組みがみるみる分かる、親子で体験できる株式売買ボードゲーム

株式売買ボードゲームをする子どもたち
株式売買ボードゲームをする子どもたち

はばたくために必要な力の一つに金融リテラシーがある。若年層向けの教育の必要性がますます高まっている状況だ。そこで、日本取引所グループの西の拠点である大阪取引所(大阪市)が行う、小学生親子向けの経済教室をのぞいてみた。

大阪取引所の1階アトリウムで行われた「春休み親子経済教室in北浜」
大阪取引所の1階アトリウムで行われた「春休み親子経済教室in北浜」

2024年3月、連携協定を結ぶ大阪府市との共催で行われた「春休み親子経済教室in北浜」。20組の定員が「1日で満席」になったということから、金融リテラシーへの関心の高まりが感じられる。今日のイベントのメインは、教育機関向けの教材として作られた株価の動きを体験するボードゲーム「ブルサ(bursa®)」。ゲームの開始に当たり、小学生にはなじみの薄い経済用語の解説から始まった。

■経済から見る社会の主人公

「私たちの社会の主人公は3者。政府と会社と家計。家計とは皆さんのおうちのこと」。

税金を使って社会を豊かにするのが「政府」だ。学校や病院、警察、消防、道路、図書館などを提供するために必要なモノやサービスを買い、公務員に賃金を払っている。「会社」はモノやサービスを売って利益を上げるところ。その利益から税金を納めることで社会を豊かにし、会社で働く人たちに賃金を払う。

では、家計の役割は?

「商品やサービスを買い、会社や公務員として働くと賃金をもらえる。賃金をもらうとそこから税金を払う。全体で見たら、モノやお金がぐるぐる回っている。このように、モノやお金が回る仕組みを経済といいます」。

「経済ってなに?」
「経済ってなに?」

株式売買ゲームで着目するのは、3者のうち「会社」だ。会社を作るにはまとまった「資金」がいる。その資金をどうやって工面するのか。会場からは「働いて貯めたお金を使う」との答え。だが、貯金だけでは大きなお金にならない。「銀行からお金を借りる」という手段もあるが、期日が来たら返金せねばならず、利息も発生する。そこで登場する秘密兵器が「株式でお金を集める」。今日のテーマだ。

■株式でお金を集めるとは

「10万円の資金が必要だとして、10万円を10口に分けると、1口1万円になる。10万円よりも、1万円の方が出してくれる人がたくさんいそうですね。そうやって、大きなお金を集めることができます」
お金を出した証明が「株式」、お金を出してくれた人が「株主」、株式を発行してお金を集めて仕事をする会社が「株式会社」だ。「株式で集めたお金は返す心配がないので、そのお金を使って大きな仕事がずっとできます。安心ですね」

では、会社が仕事をして利益が出たらどうするのか。

「利益5万円が出たとしたら、会社は税金を払います。残ったお金は、来年も仕事を続けるために一部とっておき、残りの1万円を株主にお礼として渡します。1万円を10口に分けると1000円、3口なら3000円というふうに、出してくれた口数に応じて株主に違った金額を渡します」
これが「配当金」だ。

「株主」から見て、「株式」にはどんなメリットがあるのか。

「配当金以外に、株式を買った値段よりも高い値段で売ることができたら、その差額が利益(売買益)になります。会社が大事なことを決める会議(株主総会)で、賛成反対の意見を言えます。おまけに、例えばお菓子会社だったら、作ったお菓子を株主にあげるという株主優待もあります」

ただし、注意すべき点もある。

「株式の値段は上がったり下がったりします。会社の利益が減ることもあるし、全く利益が出ないこともある。そうすると配当金が減る、あるいはなくなることもある。株式の値段が下がると、財産が減ります。さらに、会社が仕事に失敗したりして会社がなくなる(倒産)こともある。会社がなくなると、会社に出したお金、株式は0円になってしまいます」

■株式はお金に変えられる

「株式は返さなくていいお金なので、会社は株式をお金に変えてくれません。代わりに、株式を買ってくれる人を探すことになります。大変ですね。そこで、株式の売買を行う場所が市場(しじょう)です」。

株式の市場である証券取引所では、ルールに従って売買が行われる。みんなが満足できる公正な値段で、いつでも安心して株式売買ができる場だ。ここで株式が取引できるようになるためには取引所の審査に合格しなければならない。審査に合格して売買できるようになることが「上場」だ。日本には260万の株式会社が存在するが、そのうち「上場会社」は4000社ほどだという。証券取引所の立会場ではかつて手作業による売買が行われていたが、今はコンピューターを使った取引に移行した。立会場は99年4月に閉場している。

株価はどうやって動くのかも考えた。

「買いたい人が増えると値段が上がる。売りたい人が増えると値段が下がる。簡単ですね。では、どんなときに買いたい人が増えて、売りたい人が増えるのか」。これが今日のボードゲームで勝つためのポイントだ。

「配当金が増えそうな会社と、配当金が減りそうな会社では、どっちを応援したいか。配当金が増えそうな会社とはどんな会社か。利益が増えそうな会社ですね。では、どんなときに利益が増えるのか。これには答えがありません。会社の利益はいろんな理由で増えたり減ったりします。ということは、株価もいろんな理由で上がったり下がったりするんです」。

会社の利益が「この先」どうなるのか。株式売買を考える際の核心的部分だ。

「例えば、お菓子会社が新製品を発売したとします。どうなるでしょうか。もしたくさん売れれば、会社の売り上げが増え、利益が増え、配当金が増えそうだ。すると、株式を買いたい人が増え、株価が上がる可能性が高くなります。しかし、逆の場合も考えられます。新製品が出てもほとんど売れなかった場合、売り上げが減り、利益が減り、配当金が減る。株式を買いたい人が減り、株価が下がることになります。なので、ニュースを聞いた際には、この先どうなるのかを深く考える必要があります」。

■経済ニュースを聞き、その結果を考えて株式売買を行う

事前学習を終え、いよいよボードゲーム「ブルサ」が始まった。売買するのは「A自動車」、「スーパーB」、「ブティックC」の3種類。ディーラーから2万円ずつお金を受け取ってスタートだ。ゲームの流れは、「経済ニュースが流れる」、「ニュースの結果を考える」、「株式の売買を行う」。何株でも買ったり売ったりできて、最初の株価はどの社も5000円だ。

現在の株価は5000円
現在の株価は5000円

最初の経済ニュースが流れる。「A自動車、人工知能を搭載した世界最先端の電気自動車を発売、売れ行きは絶好調」。ニュースの中身を気にすることなく、子どもたちはおのおのの好みで株式を購入していく。一巡すると、結果が流れた。

最初に流れた経済ニュース
最初に流れた経済ニュース

二つ目の経済ニュースは「ドラッグストアの店舗が増えた」。やはり、前回と同じようにおのおの気になる株式を購入していく。先ほど株価が上がったA自動車の株式を購入する子もいる。

三つ目の経済ニュースは「外国人観光客が増加している」。ニュースと株価が連動することを実感し始めたのか、子どもたちが知恵を使い始める。だが、外国人観光客の増加によって利益が出る会社が分からない。悩みながら仮説を立て株式を購入していく。

四つ目の経済ニュースは「景気減速。働く人のボーナスが大幅ダウン」。良くないニュースなのは分かるが、やはり株価にどう影響するのか想像できない。迷いながらも株式を買い続ける。先ほど複数社の株価が上がったので、複数の会社の株式を購入する子もいる。一方、株式を売ることは選択肢から抜け落ちているようだ。

五つ目の経済ニュースは「気象庁の発表によれば、今年の夏も暑くなりそうだ」。皆一様に首を傾げる。暑さと関連しそうな会社が全く分からない。売るという選択肢に気が付いたので、今回は、株式を売ったり買ったりする子が多い。

購入した株式
購入した株式

具体的な経済ニュースを聞きながら株式売買の判断を繰り返すうちに、経済ニュースと株価がどう連動するのかを考えるようになり、子どもたちの思考が徐々に深まっていく様子を観察できた。

「好きな株式を買っているだけではうまくいかないようだ」「同じニュースでも、株価が上がる会社と変わらない(または下がる)会社がある」「株式は持ち続けずに売ってもいい」などだ。

今回は人気のある株式(株価が上がった株式)を買い、人気の下がった株式(株価が下がった株式)を売ることが多かったが、さらに続けていけば、どのタイミングで買ったり売ったりすると利益が大きくなりそうかも考えられるようになるかもしれない。

参加した小学4年生の須藤さん親子は、「家でもお小遣いを自分で管理させている。いい勉強になると思って来た。ゲームが面白く、家でもできるならやりたい」と満足な体験ができたようだ。

背後で見守りながら、「今は買うんじゃなくて売った方がいいのに」と口を挟みかけたが、大人でも今回の株式売買ゲームで最適解が出せたかというと甚だ自信がない。

ボードゲーム「ブルサ」は教育機関向けの教材だが、夏休みなどに取引所で「ブルサ」の体験イベントが開催されることがある。小学生にはもちろん親にとってもありがたい平易な解説付きで、時期によってニュースのシナリオが変わるためリアリティーがある。対象は小学校高学年から。ぜひ多くの親子に体験してもらいたい。

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