まめ学

【はばたけラボインタビュー】髪は健康のバロメーター アートネイチャー矢島和子さん

アートネイチャーの矢島和子さん

 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。

 毎年10月20日は「頭髪の日」——。髪・頭皮の正しい知識の普及を目指す日本毛髪科学協会(東京都新宿区)が制定した啓発記念日で、前後約1カ月の「毛髪衛生月間」に、全国で無料毛髪相談会などを開いている。髪のプロが集まるアートネイチャー社員でこれまでに延べ2万人の髪の悩みに耳を傾けてきた毛髪診断士の矢島和子さんに、髪の適切な扱い方や幼少期から魅せられてきた髪の魅力について聞いた。

Q.1 ネット上にあふれる髪情報に振り回されないためには?

 近年は髪に関する科学的な研究がどんどん進み、例えば白髪の原因などが最近の研究で分かってきました。特に日本では髪の毛に関する研究は進んでいます。インターネットには髪に関するいろいろな情報が載っていますが、すぐうのみにせず、そうした情報をできるだけ満遍なく比較して「共通」の部分をつかむようにするといいと思います。その共通の部分は、その時点の研究成果に基づいた「正しい情報」であることが多いと言えます。

 Q.2 それでも迷ったら?

 迷ったり、自分で判断できないような情報に接したら、やはり髪のプロに頼ったらいいと思います。毛髪関連業の各社が実施している無料の電話相談や面談・ヘアチェックを利用したり、無料毛髪相談会などに足を運んだりして疑問に思うことを質問するのが良いでしょう。そのような機会にヘアチェックしてもらうと、自分の髪の客観的状態が分かります。髪のケアに際しては、「髪の状態を知ること」が大切です。一般的には髪に良いとされているケアでも、ある状態の髪には別のケアが適切とされる場合があるからです。学んだ髪に関する知識は、自分の髪の状態を知ってこそ生かすことができます。

 Q.3 盲学校でヘアケア講座を開いているそうですね。

 アートネイチャーは2011年から毎年夏、東京都内の盲学校でヘアケア講座を開いて、正しいヘアケア方法や流行の髪型、髪質・頭皮のタイプにあったシャンプーの選び方、効果的な頭皮マッサージなどについて話しています。盲学校の生徒さんに理解してもらうために、はやっている髪の色を説明するのに「寒い感じの色」「暖かい感じの色」などと表現して説明したり、シャンプー時の髪を洗う適切な指の形を伝えるために生徒さんの手に触れて教えたりするなど、いろいろ工夫しています。学校側から「髪の手入れの仕方を知らない子も多く、社会人の身だしなみとして髪のケアの仕方を身に付けさせたい」とご依頼をいただいて始めた講座ですが、卒業生や教職員の方も参加するなど、とても好評でやりがいを感じています。

 Q.4 髪の悩みで多い相談は?

 よく聞かれるのは髪に良い食べ物です。残念ながら、これ1個で大丈夫というものはありません。髪の毛は85%以上がタンパク質でほかはミネラル、ビタミンです。栄養バランスの良い食事が一番大事です。髪は健康のバロメーターといわれています。髪の状態は生活習慣や寝不足、ストレスなどとも無関係ではなく、幅広い視点から考えることが必要です。内臓系やホルモン系の病気は髪の毛に影響が出ることがあります。ヘアチェックすると、普通の抜け毛と、病気による抜け毛の違いもある程度分かります。相談時には髪の状態だけでなく、体調や食生活の習慣を聞く時間を設けます。

 Q.5 印象に残る相談は?

 生まれつき髪が生えない小6の娘さんを持つお母さまからのご相談です。「いつも着けているウィッグをはずさないと友達と一緒にお風呂に入れないので修学旅行に行きたくないと娘が落ち込んでいる。娘が友達と楽しい修学旅行の思い出をつくれるよう力を貸してください」という切実な内容でした。母親の横で娘さんは一言もしゃべらずしょんぼりしています。そこでなんとかこの母子の悩みを解決したいと思い、同僚の協力と上司の理解を得て1日がかりで頭部全体に特別な増毛を施しました。これでお風呂でも普段と変わらない姿で過ごせるようになった娘さんは無事、修学旅行に行きました。旅行後に会った娘さんは「楽しかった」と初めて私の前で笑顔を見せました。この時、この仕事に就いて本当に良かったと思いました。

 Q.6 髪に関心を持つようになったのは?

 美しい髪の女性を見ると、髪に見とれて、つい追いかけてしまい、「シャンプーは何を使っていますか」と聞くような子どもでした。最近も駅で自然な美しい髪の女性に出会い、ケアの仕方など聞きたくて声をかけそうになったのですが、さすがに抑え、観察するだけにとどめました。なぜ髪にひかれるようになったのかはよく分かりませんが、あえて言えば、父に比べて豊かだった母の髪ヘの憧れでしょうか。私の髪質は残念ながら父に似ていて幼少期に身内から「この子は髪の量が少ないね」と言われていたようです。それで美しい髪を求めるようになったのかもしれません。

 Q.7 アートネイチャーでの仕事内容は?

現在の仕事は、自分で開発したカラートリートメントなどのヘアケア商品を通販番組などで販売する仕事がメインです。中学生のころはお小遣いのほとんどを自分用のシャンプー代に充て、いろんなシャンプーを試して比較する癖のある子どもでしたから、複数のサンプルを比較しながら理想のヘアケア商品を開発する今の仕事は、運命づけられた天職にも感じます。商品を開発する上で大切にしていることは、すべての開発を自分の髪で試して自分で納得した商品しか販売しないこと、また購入者のコメントにすべて目を通して次の商品開発に生かし、常に理想の商品を追い求めることです。今は髪の毛の研究が日進月歩で進化しており、髪に良い成分がいろいろと開発されています。最新の研究にアンテナを張って、商品開発の時点で、髪の毛に一番良いとされる成分を使いたいと常に考えています。今後は個人的には髪・頭皮とつながっている顔や体の肌を美しく保つためのスキンケア商品の開発にできれば挑戦したい。髪・頭皮のことを考えていくと自然と顔や体の肌の健康などに関心が広がっていきます。

盲学校での講演の様子

 

矢島和子(やじま・かずこ)/埼玉県出身。1993年アートネイチャー入社。顧客の髪の悩み相談に助言するヘアーカウンセラーを経て、現在営業企画部兼外販商品営業部次長。社内ヘアーカウンセラーの育成指導のほか、商品開発や通販番組で活躍している。毛髪診断士。


#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。