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今週は、日仏それぞれの親子の姿を描いた『高野豆腐店の春』と『ふたりのマエストロ』【週末映画コラム】

『ふたりのマエストロ』(8月18日公開)

(C)2022 VENDOME FILMS – ORANGE STUDIO – APOLLO FILMS

 パリを拠点に活躍する指揮者の親子。父フランソワ(ピエール・アルディティ)は輝かしいキャリアを誇る大ベテラン、息子のドニ(イバン・アタル)も注目の指揮者として今や飛ぶ鳥を落とす勢い。ところが2人の間には確執があった。

 ある日、フランソワに長年の夢だった世界最高峰のミラノ・スカラ座の音楽監督就任の話が舞い込む。有頂天になるフランソワだったが、翌日スカラ座の総裁に呼び出されたドニは、実は父への依頼は間違いで自分への依頼だったことを知る。ドニは、父に真実を伝えることができずに悩むが…。

 同じ職業に就く仲の悪い父と息子が、予期せぬアクシデントに遭い、葛藤する姿を描く。イスラエル映画『フットノート』(11)のリメークで、父子の職業を大学教授から指揮者に変えている。

 この映画のプロデューサーのフィリップ・ルスレは、音楽と家族を描いたフランス映画『エール!』(14)をアメリカでリメークした『コーダ あいのうた』(22)もプロデュースした。音楽を絡めたリメークものにさえを見せるタイプのプロデューサーなのだろう。監督はブリュノ・シッシュ、フランソワの妻役でミウ・ミウが出演。

 まず“依頼間違え”というアイデアが面白い。そして、ベートーベンの「第九」、シューベルトの「セレナーデ」、モーツァルトの「フィガロの結婚」などのクラシックの名曲に乗って、いかにもフランス映画らしいエスプリの効いたセリフや会話が交わされるのが見どころ。

 父と子の変化の様子の描き方がいささか弱い気がするが、ラストの“ちょっとした奇跡”に救われる思いがした。88分という簡潔な語り口にも好感が持てる。

 ところで、ドニが憧れる指揮者として、小澤征爾がせりふや映像で登場するのには驚いた。改めて“世界の小澤”なんだと実感した。

(田中雄二)