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「豊臣兄弟!」第25回「変事の予兆」家臣を追放した信長の孤独【大河ドラマコラム】

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。6月28日放送の第25回「変事の予兆」では、天下統一に向けて歩みを進める織田信長(小栗旬)の威光を示す安土城が完成する一方で、信長は長年仕えてきた一部の重臣たちを追放。その姿を通して描かれた信長の孤独が印象的だった。

(C)NHK

 安土城の完成を祝う宴席で、信長は若い近習の森乱(市川團子)と最古参の重臣・林秀貞(諏訪太郎)に相撲を取るよう命じる。その結果、信長は勝った森乱に褒美を与える一方で、敗れた林に突如、追放を宣告。場の空気が一瞬で凍り付く中、続けて佐久間信盛(菅原大吉)、安藤守就(田中哲司)も同様に、森乱との相撲を経て追放される。その後、秀吉が追放の理由を探ると、三人とも敵と内通の疑惑があったことが明らかに。長年仕えてきた重臣たちに対して非情とも言える信長の決断だったが、妹の市(宮﨑あおい)は信長にこう語り掛ける。

 「運がようございましたな。確たる証があってからでは、死罪は免れませぬ。今なら、追放で済みまする」

 心情としては、内通者たちを許したいが、立場上、それはできない。ならば今のうちに追放し、死罪という最悪の事態を避ける。市は、追放が信長の優しさだと察したわけだが、それに答えるように信長はつぶやく。

 「役立たぬ老人など、無用の極みじゃ。天下一統に情けなどいらぬ。血も涙もなき、覇道の者。それが、織田信長よ」

(C)NHK

 その言葉にすがすがしさはなく、むしろ苦渋に満ちたような表情に、天下統一に向けて歩み続ける信長の孤独と本音がにじみ、小栗の味わい深い演技にも心動かされた。このとき、威光を示すはずの安土城が、きらびやかな輝きに包まれるのではなく、寂しい夕日に照らされていたことも象徴的だった。

 さらに、その直後に描かれたのは、小一郎や秀吉たちが家族と談笑しながらくつろぐ、信長とは対照的な姿。そこには、追放された安藤守就の姿もあった。ここで小一郎が、義父の守就に「父上、どうかこれからもここにいて下され」と勧めると、秀吉や寧々(浜辺美波)たちも賛同し、守就は「皆様方、かたじけない」と涙を流す。最終的に守就は、自分がとどまると迷惑をかける上、家臣たちが行き場を失った中、自分だけがぬくぬくと生きるわけにはいかないと、小一郎の申し出を固辞し、去っていく。だが、小一郎とその妻で娘の慶(吉岡里帆)に別れを告げ、悲しみを振り払うように「案ずるな!わしは、美濃のクマ殺しじゃぞ!」と言い残したその後姿に漂っていたのは、家族の固い絆と人の温かさだった。

 この羽柴一家の温かさが、上に立つ者としての信長の孤独を、一層強く印象付けた。だが、いずれは秀吉も信長のように人の上に立ち、天下統一の道を歩むことになる。そのとき、秀吉も同様に孤独を味わうことになるのだろうか。そんな兄を、小一郎はどのように支えていくのだろうか。この先の物語を見極める上で、記憶にとどめておきたいエピソードだった。

(井上健一)