NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。3月29日に放送された第12回「小谷城の再会」では、将軍・足利義昭(尾上右近)を支える織田信長(小栗旬)が力を得る中、それに従う豊臣兄弟の運命を左右する出会いがあった。

まずは、藤吉郎と義昭に仕える明智光秀(要潤)の対話だ。信長から京都奉行に抜擢された藤吉郎は、公家たちとも付き合うようになる。しかし、農民出身の藤吉郎には蹴鞠や和歌など、文化的な知識があるわけもなく、いいようにあしらわれ、嘲笑の的となってしまう。その窮地を救ったのが、共に京都奉行を務める光秀だった。和歌も蹴鞠もそつなくこなし、公家たちからも一目置かれる光秀に対して藤吉郎は、「すごいのう、明智殿は。なんでもうまくやってのける。わしも見習いたいものじゃ」と羨望の眼差し。これに光秀は「私からすれば、木下殿の方が、よほどすごい」と返す。そして、10年ほどで足軽から織田家重臣にまで出世した藤吉郎を称えると、反対に、かつて領地を失い、10年近く家族ともども辛酸をなめてきた自らの身の上を打ち明ける。
さらに光秀は、「私はたまたま明智の家に生まれ、たまたま家督を継いだだけの、ただそれだけの男だった。木下殿のように、己の力で何かを成しえたわけでもない」と自らを卑下する言葉を吐くと、義昭との出会いによってそんな自分が救われたと語る。その前に飛び出した「木下殿にとって織田殿は、わしにとって公方様なのじゃな」という光秀の言葉は、共に理想の主君を得たことで今の地位がある藤吉郎と光秀の境遇の近さを示していた。だからこそ、ここでお互いを認め合うことができたのだろう。だが、この2人がやがて決戦に臨むことは、歴史上明らか。そのとき、このやりとりを踏まえて、2人の間にどのような思いが交錯するのか。記憶にとどめておきたい対話だった。

さらに、信長に従って小一郎と共に浅井長政(中島歩)に嫁いだ市(宮﨑あおい)の元を訪れた藤吉郎は、生まれたばかりの市の娘・茶々と対面する。この場面、「これが、後の世に豊臣家を作った者と、終わらせた者の出会いでございました」というナレーションが流れた通り、茶々は後に天下人となった小一郎=秀吉の側室となり、跡継ぎの秀頼を生む。そして、秀頼の代で豊臣家は終焉を迎えるわけだが、本作の主人公は小一郎なので、豊臣家の滅亡まで描かれるのかはわからない。となると、このナレーションがどう物語にかかわってくるのか、気になるところだ。
その小一郎は、この回のラストで運命的な出会いを果たす。その相手が、後に妻となる慶(吉岡里帆)だ。信長から「小一郎、おぬし嫁をとれ」と結婚を命じられた小一郎。その前に現れたのが、安藤守就(田中哲司)の娘・慶だった。だがこの直前、小一郎は亡くなった直(白石聖)の墓参りをしたとき、人気のない小屋から出てきた慶と出会っている。このとき慶が何をしていたのかは明らかにされず、結婚相手として現れたときの慶は表情も堅く、何やら謎めいていた。この回は次回予告もなかったが、この後、小一郎と慶がどのように夫婦となっていくのか。さらにその後、夫婦でどのように藤吉郎の天下統一に関わってくるのだろうか。
藤吉郎と光秀、藤吉郎と茶々、そして小一郎と慶。全編の1/4ほどが経過し、快調に進む物語への興味をさらに掻き立てる出会いが重なる回だった。
(井上健一)









