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岸井ゆきの×市井昌秀監督 「裕次郎をディスればディスるほど、市井さんをディスることに」 『犬も食わねどチャーリーは笑う』【インタビュー】

岸井ゆきの×市井昌秀監督 「裕次郎をディスればディスるほど、市井さんをディスることに」 『犬も食わねどチャーリーは笑う』【インタビュー】 画像1

-岸井さんは、「旦那デスノート」でしか本音を言えない日和という役に、どうアプローチしていったんですか。

岸井 私の家族のことを考えました。私は未婚なので、一番リアルに見てきたものってなると、自分の家族のことなので。家族のことはどことも比べられませんが、多分ウチの家族は仲がいいと思うんです。それでも、両親が冷戦気味のときもあったし、いろんなことを乗り越えてきたんだなというのは、一緒に暮らしていて見てきたので。ささいなことでけんかをすることもたくさんあったし、はたから見たらしょうもないと思うようなことも、本人たちにとっては大問題だったりする。基本的には母親が一方的に言っていて、お父さんがホントに裕次郎と一緒、鈍感で何で怒っているのか分からないみたいな。そういうところからチョイスして、日和を作っていきました。ウチの場合は、私が間に入るから、それがデスノートに書かない理由だと思います。「お父さん、そういうときは『ありがとう』って言わないと駄目だよね」で、うまくいく。でもチャーリーは全部見ているけど、日本語をしゃべれないから。

-夫婦は他人だから逃げずに向き合わないといけないというメッセージは、『ドライブ・マイ・カー』にも通じます。さらに、深田晃司監督の新作『LOVE LIFE』でも、直接感情をぶつけ合えない夫婦像が描かれています。こういった偶然のテーマの共鳴は、一流のクリエーターほど時代性に敏感だからではないでしょうか。夫婦に限らず、今は大事な人と向き合えない時代だと思いますか。

市井 シンプルにあるとは思います。SNSとかハンドルネームの人の悪意めいた発信が、自分に対してだけではなく、すごく嫌で。匿名だから強く言い切れる部分もあるから。ですが、この映画はそういう闇をどうにかしようという作品ではなく、時代として感じてはいましたけど、そこに重きを置いて作ったわけではないです。あくまでも自分自身の夫婦が念頭にあったので。

岸井 時代のせいにはしたくないですね。

市井 そう見えているだけかもしれないですね。どんなに親しくても向き合っていないということは、いつの時代でもあると思います。普遍的な人間関係じゃないかと。

岸井 時代じゃないと思う。確かに、時代のせいにしがちというか、しやすいとは思いますけど。あくまでも、この夫婦の例だと思います。

(取材・文・写真/外山真也)

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